サンパウロ市役所=リベルダーデ再整備事業開始=歩道拡張で地域の回遊性向上へ

改修前の広場の様子。現在は車両アクセス路がマクドナルド側からに変更された

 サンパウロ市役所(リカルド・ヌーネス市長)は、市中心部のリベルダーデ区で歩道拡幅や排水改善、緑化、バリアフリー対応などを含む大規模な再整備工事を5月から開始した。観光客や地元住民から親しまれる観光・商業拠点としての魅力をさらに高めるとともに、安全かつ快適な歩行者空間の形成を図る。
 市都市開発公社(SP Urbanismo)が監修し、総面積1万4500平米にわたる工事は2026年完了を予定している。総事業費は約460万レアル(約1億3千万円)で、都市開発基金(Fundurb)により賄われる。
 整備対象はリベルダーデ大通りを軸に、エステダンテ街、ガルボン・ブエノ街、リベルダーデ広場、アメリコ・デ・カンポス街、トマス・ゴンザガ街、アフリットス街。計画の核となるのは、歩道の大幅な拡幅と舗装の均質化、交差点での段差解消、樹木の新規植栽、雨水の浸透処理を行う「雨庭」設置など、持続可能な都市環境づくりを意識した改修工事だ。
 特に歩行者の安全と利便性を重視し、既存の舗装を撤去しながら歩道幅を最大で2倍に拡張。路面には滑りにくい舗装材を使用し、段差や傾斜を可能な限り解消する。点字ブロックやスロープの標準化により、高齢者や視覚障がい者を含むすべての人にとって歩きやすい環境を整備する。
 交差点では車両の速度抑制を目的に、路面と同じ高さにした「フラット交差点」を導入。これにより、歩行者が安全かつスムーズに横断できる環境を提供する。車道は維持されるが、一部区間では駐車スペース(ゾナ・アズール)の縮小により歩道空間を確保。一方で商業活動への影響を最小限に抑えるため、荷下ろし用のスペースも新たに設定される。
 雨水排水の強化も本事業の柱だ。各通りに設置される雨庭は雨水を一時的に溜め、土壌や砂利、植栽によって浄化したうえで地下へ浸透させる仕組みで、従来の排水管による流出を補完する形となる。これにより、都市型洪水のリスク軽減とともに街路景観の向上も見込まれる。
 街路樹の追加植栽も進められる予定で、各通りには新たな並木が整備される。これにより、歩行者に日陰を提供するほか、ヒートアイランド現象の緩和や都市の景観向上にも寄与する。ベンチやごみ箱、照明灯も新設され、歩行者が休憩しやすい滞留空間を形成する。

サンパウロ市のリカルド・ヌネス市長(Wikimedia Commons)

 施工は段階的に進められ、第1段階としてすでにリベルダーデ広場での工事がほぼ終了し、今週土曜日の七夕祭りでヌーネス市長立会いの元、正式な広場再開式が行われる予定。これに続き、エステダンテス街では歩道の拡幅と雨庭の整備、照明・ベンチの設置が予定されている。ガルボン・ブエノ街では歩道と車道の段差をなくし、車両通行を維持しつつ、歩行者が優先されるデザインとなる。
 広場では車両のアクセス路がエステダンテ街からリベルダーデ大通りへ変更され、歩行者専用空間の確保が進められる。広場の床材も一新されるが、伝統的なモザイク模様は保存され、歴史的景観との調和も意識されている。
 工事中の影響を最小限に抑えるため、市は各通りごとに個別の工程表を作成し、近隣の商店主らと継続的に情報共有を行う体制をとる。交通規制や歩行者導線の変更についても、都市交通会社(CET)の承認を得たうえで順次実施される。
 今回の再整備により、リベルダーデは単なる観光名所から、歩行者主体の持続可能な都市空間へと進化することが期待されている。市当局は「商業機能と歴史文化の融合を保ちつつ、安心して歩ける街を目指す」としており、工事の進展により同地区の価値がさらに高まる見通しだ。
 詳しくはサンパウロ市役所サイト(https://gestaourbana.prefeitura.sp.gov.br/noticias/prefeitura-inicia-obras-para-requalificar-o-bairro-da-liberdade-com-calcadas-mais-largas-travessias-seguras-e-novos-espacos-de-permanencia/)で。

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