《記者コラム》焦ると脆い今日のセレソン

ジャマイカ戦前の女子セレソン(Thais Magalhães/CBF)

 女子サッカーW杯でブラジル代表(セレソン)が早くも敗れ去った。しかも決勝トーナメントに進出することもなしに…。セレソンが同トーナメントに進出できなかったのは1995年以来28年ぶり。6回連続出場していたエース、マルタの最後の大会を最低の成績で終わらせてしまった。
 もっとも、脱落が決定してしまった試合、対ジャマイカ戦がそんなに厳しい試合だったとは思わない。勝ち点で1点リードされていたとはいえ、ジャマイカの世界ランキング43位に対し、セレソンは8位。いかに勝利が義務付けられていた状況だったとはいえ、普段通りの実力が出せていれば、楽に勝てていたはずだ。
 ところが肝心な1点が取れない。セレソンはこの試合で、ジャマイカがわずか3本のシュートしか打てない中、18本のシュートを打ちまくるもゴールを割れず、結果、0―0で敗れてしまった。
 この試合を見て、「あ〜あ、またかよ」と思ってしまった。女子に限ったことではない。男子も含め。ブラジルはW杯のここ一番というところで焦り、実力を発揮できずに終わってしまうことが相次いでいる。
 男子の場合は、あの2014年のネイマールを欠いての準決勝での1―7の歴史的な屈辱が思い出されるが、それ以降もそうだ。2018年のベルギー戦も、2022年のクロアチア戦も、それまでの試合で好調だったところから、序盤に点が取れないことで焦ってしまい、シュート数でもボール保有率でも圧倒しながら敗れてしまう試合が目立っている。
 2022年の場合は、決勝トーナメント行きを確定させ、控えメンバーで臨んだカメルーン戦も入れてもいいだろう。あの試合でも「控えでも楽勝」とばかりに力を見せつけたかったところが、序盤に点を逃し続けたところから攻撃が空回りし、20本以上のシュートを放って無得点。逆にアディショナル・タイムでカウンターを食らってまさかの敗戦。これが、優勝候補だったセレソンの勢いを殺してしまった。
 今のセレソンの問題は戦力ではない。選手の名前だけなら他国が羨むレベルだ。だが、それゆえに、試合の前半から点を積み重ねて圧倒できないような試合に脆い。男子も女子も、今のセレソンに求められるのは、接戦、あるいは劣勢の際に集中力と冷静さを保ち、試合の終盤でこそ力が発揮できるような強さだろう。それは選手個々の実力の次元を超えた何かだ。(陽)

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