《記者コラム》「太陽は全ての人を照らす」大学に進んだホームレス達

チアゴ氏とレアンドラ氏(23日付G1サイトの記事の一部)

 23日付G1サイト(1)に、大学に進み、新たな歩みを踏み出す機会を得た路上生活経験者の記事が出ていたので、ここに紹介したい。
 一人は、麻薬に手を染めて18歳で家出したチアゴ・シルヴァ・バロス氏(36)だ。同氏は11年間の路上生活で、家がない故の困難や麻薬中毒との戦いを経験したが、読書への愛が勉強したいと思い立たせたという。
 彼が高校を卒業できたのはホームレスの人に特化した支援を行うセントロ・ポップのおかげで、同センターのサポートで高校を卒業後、ブラジリア大学に入学して文学を専攻。結婚して子供もいるという同氏は「教育が人生の展望を与えてくれた」「薬物を断てたのは勉強や本、新しい世界との交流のおかげ」「知識が増えるほど人としても成長する」と語る。卒業は間近で、今後は院に進み、教師になりたいという。
 もう一人は、ミナス州で農業に従事していたが、仕事を求めて2017年にブラジリアに来たというレアンドラ・デ・ファッチマ氏(58)だ。
 彼女は住む所がなく、女性専用の収容施設に身を寄せた3カ月間、学びに集中し、三つの大学の入試に合格したが、経済的な基盤がなく入学を諦め、地元に戻り、家族を助けるために農業に従事した。
 だが、勉学への望みは捨てきれず、路上で雑誌を売って金を貯めると再び勉強に励み、国家高等教育試験(Enem)に挑戦。昨年からブラジリア大学で教育学を学んでいる。
 彼女は路上生活者達に伝えたいことを「希望はある。太陽は全ての人を照らすと信じるべき。路上生活者にも夢を見、夢を実現させることは可能だ」という言葉でまとめた。
 現在の夢は大学卒業と農村部での教育関連プロジェクトの実現だ。社会経済的に不安定な立場の農村部の青少年や成人を教育を通して助けたいという。
 ブラジリア大学の調査によると、首都の路上生活者の86・4%は中学も卒業しておらず、教育で生活が変わると信じられない人が15・4%いる。学業を止めたのは家族を支えるために働く必要があったが15・4%、定まった住所や必要な書類がなくて入学できなかった人もいる。
 チアゴ氏やレアンドラ氏の例は、夢を持ち、道を探すことで新しい人生を歩みだすことができることを教えてくれる。
 定年退職後に孫と同年齢の人と机を並べて学ぶ人の話や「意志あれば道あり」「苦労は買ってでもせよ」といった格言も思い出すが、夢は新たな意欲を掻き立てるもとでもある。太陽の光を皆が受け止められるように願いつつ。(み)

(1)https://g1.globo.com/df/distrito-federal/noticia/2023/06/23/o-sol-brilha-para-todos-ex-sem-teto-do-df-entram-em-universidades-e-relatam-mudanca-de-vida-por-meio-da-educacao.ghtml

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