南米首脳会議で“バナナの皮踏んだ”ルーラ=マドゥーロ優遇で大反発=共通通貨説くもから滑り

南米諸国会議の様子(Ricardo Stuckert/PR)
南米諸国会議の様子(Ricardo Stuckert/PR)

 5月30日、ブラジリアで南米諸国11カ国の首脳が集まり、会議が行われた。主催したルーラ大統領は「イデオロギーを超えた南米の団結」を主張し、南米共同通貨の必要性などを説いた。だが、ベネズエラで独裁的な政治を行っているマドゥーロ大統領を擁護した発言を巡り、強い反発を受け た。5月30日付フォーリャ紙など(1)(2)(3)(4)が報じている。
 この会議には、南米大陸の12カ国中11カ国(ブラジル、アルゼンチン、チリ、コロンビア、エクアドル、ベネズエラ、パラグアイ、ウルグアイ、ボリビア、ガイアナ、スリナム)の大統領たちが参加して行われた。ペルーはディナ・ボルアルテ大統領が汚職捜査で国外渡航を禁止されているため、閣僚評議会議長のアルベルト・オタローラ首相が参加した。
 ルーラ大統領は演説で「イデオロギーを超えた南米諸国の団結」を説いた。これは、事前に幾つかの国が反発していた、ルーラ氏が画策している南米諸国連合(UNASUL)の再始動に関する返答だった。
 UNASULは2008年に「米国の影響を受けない南米連合」との意図で立ち上げられた。だが、ルーラ氏はじめ、ベネズエラのチャベス氏、アルゼンチンのクリスチーナ氏と左派色が強い組織というイメージを持たれ、2019年にボルソナロ政権が離脱したのを始め、当時保守政権だった6カ国が離脱し、機能不全に陥っていた。
 ルーラ大統領は「イデオロギーの違いを超えた団結」を主張すべく、南米独自の共通通貨の必要性を主張した。ルーラ氏はBRICSの会議でも、ドルに左右されない共通通貨の必要性を主張していた。
 また、ルーラ氏大統領は、1月8日に起きた三権中枢施設襲撃事件を引き合いに出し、南米諸国の間で民主主義が守られることの意義を主張した。
 事前の様子から口にするのがはばかられる状況があったものの、ルーラ氏はUNASULのよかった面などをあげ、再始動への意欲も見せた。また、ラテンアメリカ開発銀行(CAF)や社会経済開発銀行(BNDES)の名前を挙げ、南米地域の開発にこれらの金融機関が積極的に働きかけることを提案した。
 南米諸国をまとめたい意向のルーラ大統領だったが、各国の首脳の反応には冷めたものも目立っていた。その理由は、ルーラ大統領が前日5月29日にベネズエラのマドゥーロ大統領に対して行った言動だった。
 ウルグアイのラカージェ・ポウ大統領はルーラ氏とマドゥーロ氏との2カ国会談が今回の会議の前に行われていたことに不快感を示した。
 また、ラカージェ・ポウ氏とチリのボリッチ大統領は共に、ルーラ大統領が前日の会談後の記者会見でベネズエラの国情に関して、「反民主主義と権威主義的な言説の犠牲者」と話したことに強く反発。両大統領は異口同音に、「ベネズエラで起こっていることは真実だ」とルーラ氏に反論している。ラカージェ・ポウ氏は中道右派、ボリッチ氏は急進左派だ。
 CNNブラジルによると、ルーラ氏の側近たちはルーラ大統領がマドゥーロ大統領を受け入れたことを、「バナナの皮を踏んだ」(失敗することの慣用句)と表現しているという。

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