《ブラジル》「イカ(ルーラ)とシュシュ(アウキミン)は相性が良い!」反ボルソナロを旗印に正式に出馬表明

出馬表明演説後のルーラ氏と支持者たち(Ricardo Stuckert)

 【既報関連】ルーラ元大統領(労働者党・PT)が7日、10月の大統領選挙への出馬を正式に表明し、コロナ感染が判明してオンライン参加した副候補のアルキミン元サンパウロ州知事(社会党・PSB)と共に出馬演説を行ったと7~8日付現地紙、サイトが報じた。
 ルーラ/アルキミン両氏の出馬表明は、サンパウロ市北部のエクスポ・センター・ノルテで行われた。グレイシー・ホフマン党首、ジウマ・ロウセフ元大統領、フェルナンド・ハダジ元サンパウロ市市長といったPTの重鎮と、今回の選挙で連立を組む政党など6党の政治家、18日にルーラ氏と結婚する社会学者のロザンジェラ・ダ・シルヴァ氏(通称ジャンジャ)らも参加した。
 ルーラ氏が6回目の大統領選で長年の政敵だったアルキミン氏と組むとの話は多くの人を驚かせたが、アルキミン氏の所属政党決定までのやり取りは反ボルソナロという旗印で一致団結するための新体制作りの必要性を認める契機となった。
 この日のルーラ氏は語調も穏やかで、「この集まりは政治的行為である以上に、全ての階級、宗教、人種、地域の全ての世代の男性と女性、全国民への呼びかけだ」とし、出馬の目的を「民主主義と主権を取り戻すため」と説明した。
 ルーラ氏は約45分間の演説の中で、生活費高騰や購買力喪失などを批判し、「我が国は今、史上、最も危険な瞬間を生きている。我々を支配する無能や権威主義に代わる道を築くために、目の前に現れ得る違いを乗り超えていく必要がある」と強調。「あらゆる背景や色合いを持つ民主主義の人を集め、全体主義の脅威や憎しみ、暴力、差別、排除・排斥に立ち向かう幅広い運動としたい」「困難を乗り切り、働くための安寧と平静さが必要だ」と語った。

「ルーラ(イカ)とシュシュは美味しい!」とのネットチラシ

 他方のアルキミン氏は自分達が長年の政敵であった事を認めた上で、「今回の選挙はブラジルの民主主義が本物かを確かめる大規模なテスト」「自由な選挙を貶めるような嘘や無知がはびこる中の唯一の希望はルーラ氏だ」と強調。同氏は、「ルーラ(イカ)とシュシュ(はやと瓜)は相性がよく、ブラジル人家庭でヒットする料理になる」との冗談で笑いを誘いつつ、ルーラ氏が描くプロジェクト実現のために力を合わせようと中道勢力に呼びかけた。
 ルーラ氏はこれを受けて、「ルーラとシュシュは大統領邸のメインディッシュになる」とした上、サンパウロ市でレストランを経営する支持者に「店のメニューにどうだ?」と尋ねた。
 「シュシュ」は互いの親密さを表す呼び名でもあるが、面白みや味がない物や人をさす「はやと瓜のアイスキャンデー(picolé de chuchu)」という渾名を嫌っていたアルキミン氏がこのような冗談を語った事も、過去を越えようとする決意の表れといえる。
 演説終了後はルーラ氏とPTや各政党の政治家、会衆が抱擁を交わしあい、盛大なフェスタの様相を呈した。だが、現在の連立体制ではルーラ氏達が狙う中道派を巻き込んだ拡大前線の形成には不十分との感触は今も残っているようだ。

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