商議所昼食会=「財相が党幹部なら市場悪化」=日系3行が経済見通し語る

パネルディスカッションの様子

 ブラジル日本商工会議所(村田俊典会頭)は18日、今年第5回目となる「定例懇親昼食会」をサンパウロ市内のチボリ・モハレジ・ホテルで開催した。日系企業関係者ら120人が参加し、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行のエコノミストがパネルディスカッション「ルーラ新大統領の経済政策や2023年以降の経済動向について」を行った。

 パネルディスカッション開始に先立って挨拶に立った木阪明彦三菱UFJ銀行副会頭は「3行のエコノミストが一堂に会して、自由に発言する場は日本ではあまり見られません」と今企画の意義を語った。
 パネルディスカッションには三菱UFJ銀行からカルロス・アルマンド・ドゥシェイン・ペドローゾ氏、みずほ銀行からルシアーノ・ホスタグノ氏、三井住友銀行からマルコス・カマルゴ氏が参加した。進行役は三菱UFJ銀行のナカホド・マウリシオ氏が務めた。
 パネルディスカッションで3氏は、ブラジルの財政状況について概説。ジェラルド・アルキミン次期副大統領が16日に生活扶助を歳出上限枠外で扱う憲法補則案を連邦議会に提出したが、国家財政は赤字が顕著であり、いかに増税せず、公共部門の支出を抑えるかが課題となっていると語った。
 新政権の経済政策については、財務大臣が明らかになっていない現状から、もし経済に精通していない労働者党幹部や、新政権の政策に通じた人物が財務大臣に就任すればバラマキ政策が行われ、市場は悪くなると予想した。
 市場関係者らは財務大臣に、2003~11年のルーラ政権時代にブラジル中央銀行の総裁を務め、16~18年のミシェル・テメル政権で財務大臣を務めたエンリケ・メイレーレス氏のような厳格で保守的な人物が就任することを期待しているという。しかし、過去の労働党政権では、厳格と目されて就任した財務大臣でも、政権を説得できず、結局はバラマキ政策を行った例がある。
 国内のインフレについては、中央銀行の今までの努力により、来年以降は収束すると予想した。しかし、失業者や貧困層の購買力の低下による影響も無視できず、新政権がこれまでの財政政策を貫かなければインフレが進行する恐れがある。
 国内財政は赤字だが、国際的には貸付国の立場にあり、国際経済では有利な立場にある。欧米の先進国とともに世界に先駆けてインフレ対策を行ったため、政策金利も下がっている。
 為替は先週1週間だけで1米ドル=5~5・5レアル間を推移し、年内には5・6レアルに達すると予想。新政権が実利主義に徹し、国内市場を落ち着かせ、財政赤字に拍車をかけなければ5・4~5・5レアルに収まると見込んだ。
 産業政策に関しては、ジウマ政権の時代から産業活動を奨励しており、競争力を高める優れた環境になると考えられる。中小企業への貸付も積極的に行われており、公立銀行が特定の産業にテコ入れしないことが望まれるとした。
 広範囲の税制改革の中で関税に大きな変更点はなく、開放経済と関税緩和を実現し、長期的な国内の生産力や競争力は高まっていくと予測した。

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