ボルソナロ、44時間後に沈黙破る=ルーラ祝わず抵抗もせず=新政権への移行は進む

1日のボルソナロ氏の会見(Fabio Rodrigues Pozzebom/Agencia Brasil)
1日のボルソナロ氏の会見(Fabio Rodrigues Pozzebom/Agencia Brasil)

 ボルソナロ大統領は1日、大統領選での落選から44時間が経過した時点で、大統領官邸で記者会見を開き、選挙後初めて公の前で発言を行った。発言中、当選したルーラ氏には触れず、選挙結果を承服する内容の発言は行わなかった。しかし、「憲法に従う」と語ったことで、懸念されていた抵抗行動の可能性は排除された。その後、シロ・ノゲイラ官房長官が「移行作業を開始する」と続け、次期政権への移行は進むこととなった。
 大統領選の決選投票が終わった10月30日の夜以降、諸外国の首脳からはルーラ氏の当選を認める祝辞が届き、国内でも連邦議会や最高裁、ボルソナロ政権の閣僚らが次々と承認を行った。だが、その中、ボルソナロ氏は沈黙を続けた。その間、ボルソナロ氏を支持する国民が抗議活動で全国の主要幹線道路を封鎖する事態が勃発。この混乱を大統領が沈黙を保っているせいだとして問題視する声も聞かれた。
 1日午後、大統領官邸は急遽、ボルソナロ大統領による声明発表のための記者会見を開くと発表。国の内外から多くの取材陣が詰めかけた。会見実施は午後3時過ぎに報じられたが、大統領はなかなか登場せず、取材陣は焦らされた。
 ボルソナロ大統領は1時間以上遅れて登場。4時半ごろ読み上げられた声明は3分にも満たない短いものだった。
 ボルソナロ氏の声明にはルーラ氏の名前も祝福の言葉も一切入っていなかった。最初に語られたのは自身に票を投じてくれた国民への感謝で、「私たちの夢はさらに強くなる」「緑と黄色の旗の下、経済や宗教、表現の自由を守ってきた」と保守派リーダーとしての自負を語った。
 その一方で「私を批判する者は私があたかも非民主主義的だと言うが、私は検閲などしたこともなく、三権や憲法の範囲内で行動してきた」とし、憲法を遵守することを強調した。このことから間接的に敗北と政権移行を認めるものだと解釈されている。
 さらに、展開中のデモに関して、「選挙のプロセスに関する怒りだろう。平和的なものなら歓迎する」との言葉で自身がかねてから主張を展開してきた選挙の不公正性をほのめかしながらも、「器物を破損したり、人の行き来を妨げたりする、左派のような抗議行動は行われるべきではない」と批判を行った。大統領は翌2日も、より具体的な表現でデモの中止を求めている。
 かなり短い会見で、具体的に敗北を認めなかったことから、大統領の声明には強い批判の声があがったが、この会見後に行った最高裁での話し合いで、ボルソナロ氏は敗北を認めたとされている。同席したエジソン・ファキン判事によると、大統領は「もう終わったことだ」という表現を使ったという。
 一方、新政権への移行は進んでいる。ルーラ氏から引き継ぎ責任者に指名されたジェラウド・アルキミン次期副大統領は3日、大統領府を訪れ、シロ・ノゲイラ官房長官とも話し合いを行い、引き継ぎ準備を整えている。両氏をはじめとした引き継ぎの担当者たちは連邦会計検査院(TCU)にも出向き、移行に向け、より具体的な動きを起こしている。

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