《ブラジル》ボルソナロ「子供がコロナで死ぬのか?」=ANVISA口撃で反発招く=子供への接種計画発表の翌日に

6日の放送時のボルソナロ氏(Twitter)

 ボルソナロ大統領は、保健省が5〜11歳児へのコロナワクチン接種を認めると発表した翌日の6日、「その年齢層の子供はコロナでは死んでいない」と語り、接種を了承した国家衛生監督庁(ANVISA)を改めて批判。医療関係者やメディア、国民の強い反発を招いた。6、7日付現地紙、サイトが報じている。
 大統領の発言は、TVノーヴァ・ノルデステ局に出演した際に飛び出したものだ。大統領はまず、「5歳から11歳の子供がコロナ感染症で命を落としたなどという話を聞いたことがあるか? そんな話は聞いたことがない」とまくし立てた。
 さらに、「死なない病気に対してワクチン接種とは、ANVISAにはどんな思惑があるんだ」と挑発する発言まで行った。
 ボルソナロ氏は昨年12月16日にANVISAが5~11歳児へのファイザー社ワクチンの使用を承認したことで激怒。「承認した理事の実名をさらせ」と、反ワクチン派の暴力感情を刺激しかねない発言を行って、同庁とは一触即発の状況にあったが、今回の発言で火に油を注いだ。
 だが、保健省の公式統計によれば、約62万人というコロナ感染症による死者に占める割合は小さいものの、5歳から11歳の子供は308人亡くなっている。
 ブラジル小児科学会は4日に開かれた子供への接種に関する公開協議の場で、「コロナウイルスは、国が予防接種計画の対象としているどの病気よりも多くの死者を出している」と語り、コロナワクチンの接種の必要性を説いていた。

 同学会は今回の大統領発言後に抗議声明も出しており、「子供へのワクチン接種は他国よりもはるかに高い子供の死亡率を引き下げ、国全体の死者を減らすための重要戦略だ」と主張している。
 全国予防接種計画のコーディネーター経験者のカルラ・ドミンゲス氏も、「新型コロナでは19歳以下の若者が2500人、5〜11歳だけみても300人余りが亡くなった。前代未聞の事態だ」と主張している。
 ANVISAは今回の大統領発言に関するコメントを避けているが、子供へのワクチン接種は欧米諸国など30カ国以上で行われており、同庁ではすでにブタンタン研究所が提出した3~11歳児へのコロナバックの使用許可申請の検討も進めている。また、保健省は0~4歳児への接種も考えているとの情報もある。
 6日夜のグローボ局のニュース番組「ジョルナル・ナシオナル」では、キャスターのウィリアム・ボーネルとレナタ・ヴァスコンセロスが、「大統領は今日行った言動が国にどういう影響をもたらすかを知り、その責任を負うべきだ」と語り、話題を呼んだ。同番組ではコロナでの子供の死の実態も報じている。
 ボルソナロ氏の発言は、バイア州の豪雨被災にも関わらず、休暇を満喫した上、丸呑みしたエビによる腸閉塞で仕事始めの3日から入院して休み、今年の公務を始めた矢先に行われたものだった。

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 5〜11歳児へのコロナワクチンの接種を改めて批判し、物議を醸したボルソナロ大統領。だが、世論調査ではその意向とは裏腹の結果も出ている。ポデール・ダッタが行った世論調査では、国民の71%が「自分の子供にコロナワクチンの接種を受けさせる」と回答。ボルソナロ政権の支持者でも、58%が「受けさせる」と答えている。反ワクチン派から強い支持を受けているボルソナロ氏ではあるが、これでは大統領選でも不利になるのでは。

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