《ブラジル》オラーヴォ氏がコロナ死?!=極右思想のインフルエンサー=ボルソナロ政権に影響あるか

オラーヴォ氏(ツイッター公式アカウント)

 ボルソナロ大統領らに多大な影響を与えてきた極右思想家のオラーヴォ・デ・カルヴァーリョ氏(74)が24日、新型コロナ感染症で亡くなった。同氏の思想に強く影響された大統領をはじめとした閣僚の行動が国際的に物議を醸してきたことなどから、同氏の死が与える影響は大きいと考えられている。25日付現地紙、サイトが報じている。
 オラーヴォ氏は15日に新型コロナ感染症との診断を受けた後、米国のヴァージニア州リッチモンドの病院に入院していた。
 頻繁に更新されていた同氏のSNSがその1週間ほど前からは止まっており、「何かあったのでは」と囁かれ、死亡説も流れていた。今回の死は、同氏の思想に関する映画を作成した映画監督のジョジアス・テオフィロ氏によって最初に伝えられた。また、親子の縁を切ったとされる娘のエロイザ氏は、SNSに「新型コロナ感染症で死亡」と流している。
 オラーヴォ氏は1947年にサンパウロ州カンピーナスで生まれ、1980年代から政治に関する記事を新聞や雑誌に書き始めた。2000年代からはサイト「顔のないメディア」やネットラジオ「真実を語る」などを始めた。
 こうした活動を通して、同氏はアインシュタインやニュートンをはじめとした科学を否定し、マルクス経済学の徹底批判や環境問題に対するアンチテーゼを展開。彼の言説がブラジル国内での極右路線に影響を与えていた。

 同氏の存在はボルソナロ氏が大統領となった2019年から注目を浴びるようになった。ボルソナロ政権では、エルネスト・アラウージョ前外相やリカルド・サレス前環境相、リカルド・ヴェレス・ロドリゲス氏と後任のアブラアン・ウェイントラウビ元・前教育相など、オラーヴォ派が重要な閣僚職を占め、話題を呼んだ。
 2019年のボルソナロ大統領初の米国外交の際は米国での窓口役となり、大統領三男エドゥアルド下議と共に、トランプ大統領(当時)の元参謀役だった同国の極右の大物スティーヴ・バノン氏との懸け橋役にもなった。
 だが、オラーヴォ氏に心酔するボルソナロ政権内のネット裏工作担当「憎悪部隊」を率いる大統領次男カルロス氏と、軍人閣僚たちの対立が激化。サレス氏の下で進む森林伐採が国際的な問題となったことや、アラウージョ氏やウェイントラウビ氏の行った中国に対する批判発言が、最大の貿易相手国である中国との関係を悪化させたことも重なり、次第にボルソナロ政権内での地位を失っていった。
 また、オラーヴォ氏はコロナのパンデミックが起こった直後の2020年3〜5月頃の外出自粛反対や、反連邦議会・反最高裁の「反民主主義デモ」でも精神的指導者となった。最高裁攻撃で逮捕された過激派極右集団「300・ド・ブラジル」を率いたサラ・ウィンター氏も、同グループの精神的師匠がオラーヴォ氏であったことをほのめかしている。
 同氏は昨年8月に心臓の手術などで3カ月間、サンパウロ市で入院。コロナワクチンの接種も受けていなかった。
 25日付フォーリャ紙は、同氏の死で「イデオロギー的ボルソナロ主義の最初のサイクルが終わった」と評している。

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 25日、ブラジルのネット上の話題はオラーヴォ・デ・カルヴァーリョ氏の死一色となった。同氏の死に対して、ボルソナロ大統領は「わが国史上、最大の思想家が亡くなった」と追悼し 、大統領支持の政治家たちもそれに倣った。だがその裏では、同氏の死を祝うツイートや、極右支持者が犯罪者に対して使う「CPF(納税者番号)はキャンセルされた」との表現でオラーヴォ氏を皮肉ったジョークもかなり溢れていた。大統領支持者への影響は大きいものの、同氏の科学否定の考え方が新型コロナの死者を世界第2位に押し上げ、国際的な環境や外交の問題も引き起こしていただけに反応は複雑か。

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