《ブラジル》司法や財界、産業界の代表らが「民主主義擁護の嘆願書」=選挙制度に疑問呈するボルソナロに釘を刺す

USP法学部校舎(公式サイトより)

 8月11日に、企業家や銀行家、元最高裁判事らが署名した「民主主義国家を擁護するブラジル人への手紙」が読み上げられることが決まった。同公開書簡には大統領を名指しする記述はないが、ボルソナロ氏が選挙結果を受け止めない態度をとる可能性に対する警戒感が、産業界から司法界に至るまで強まっていることが今回の動きにつながった。24~27日付現地紙、サイトが報じている。
 この公開書簡はUSP法学部サイト(https://direito.usp.br/noticia/3f8d6ff58f38-carta-as-brasileiras-e-aos-brasileiros-em-defesa-do-estado-democratico-de-direito)で公開されており、26日午後現在で3096人の署名が集められている。
 署名者には、財界からは中銀元総裁のアルミニオ・フラガ氏やイタウ銀行元頭取のカンジド・ボテーリョ・ブラシェル氏、ブラジル銀行元経営審議会議長のジョゼ・ギマリャンエス・モンフォルテ氏、司法界からは最高裁長官を務めた経験もあるアイレス・ブリット氏、セウソ・デ・メロ氏、マルコ・アウレリオ・メロ氏、芸能界からは歌手のシコ・ブアルキ氏や女優のデボラ・ブロック氏、ジャーナリストからはレイナウド・アゼヴェド氏などが名を連ねる。
 この嘆願書は8月11日に、サンパウロ市セントロのラルゴ・デ・サンフランシスコにあるサンパウロ総合大学(USP)法学部で読み上げられる。この場所は1977年8月に、同年4月に約2週間の連邦議会閉鎖を行った軍事独裁政権に対し、同大学法学教授だったゴフレッド・ダ・シウヴァ・テレス氏が民主主義を求める声明文を高らかに読み上げた由緒ある所でもある。
 今回の声明には、その時の民主主義希求の声明文に署名した司法関係者が数多く署名を行っている。2016年にジウマ大統領の罷免請求を作成したことで知られる法学者のミゲル・レアレ・ジュニオル氏もその一人だ。
 26日までの署名は検察関係者250人、企業関係者208人など、その範囲や規模も多岐にわたっている。
 この動きはさらに広がりそうな兆しを見せている。サンパウロ工業連盟(Fiesp)は27日、24日に続き、「民主主義を守るためのあらゆる行動に参加する」との声明を出した。サンパウロ州産業界で多大な影響力を持つFiespは、前会長のパウロ・スカッフィ氏が熱心なボルソナロ大統領支持派として知られていたが、現会長のジョズエー・ゴメス・ダ・シウヴァ氏はルーラ政権(2003〜10)の副大統領、ジョゼ・アレンカール氏の息子で、スカッフィ氏とは対照的な運営方針を見せている。
 また、元Fiesp会長のオラシオ・ラフェル・ピヴァ氏も、「民主主義が敗れ去るようなら、社会に甚大な後退がもたらされる」と語るなど、財界からも民主主義の順守を求める声が次々と上がっている。
 こうした動きは、大統領が18日に各国の大使や代表に対してブラジルでの選挙疑惑を証拠もなく訴えた後、国内外で強まっている。選挙高裁に対して選挙の透明性を疑い続け、大統領同様に問題視されているパウロ・セルジオ・ノゲイラ国防相は26日、米州国防相会議の演説で「米州機構の求める民主主義を尊重する」と宣言した。

★2022年7月21日《ブラジル》選挙虚報演説でボルソナロに非難殺到=下議や検察、連邦警察まで=米国は逆に選挙制度を称賛
★2022年5月18日《ブラジル》選挙システム攻撃は民主主義攻撃=人権団体等が大統領に抗議=ボルソナロはなおも不信感
★2022年2月18日《ブラジル》ボルソナロが選挙への不信発言を再開=軍が「票の安全性」で大量質問=TSEは質疑応答を公開し対応

最新記事