《ブラジル》選挙システム攻撃は民主主義攻撃=人権団体等が大統領に抗議=ボルソナロはなおも不信感

団体からの抗議声明を受け取るファキン長官(Twitter)

 ボルソナロ大統領が現行の選挙システムに対する不信感を述べ続けていることで、民間団体が選挙高裁に抗議声明を提出する事態が生じている。選挙を軍に管轄させることに関しては引き下がった大統領だが、依然として選挙への不信発言は続けている。16、17日付現地紙、サイトが報じている。
 16日、「選挙システム防衛連合」というグループがエジソン・ファキン選挙高裁長官に、ボルソナロ大統領の度重なる選挙システムに対する攻撃に抗議する声明文を提出した。
 このグループは、ブラジル先住民連絡会(Apib)や民主主義のためのブラジル法律家協会(ABJD)、黒人人権連合、ブラジル女性司法支援者連合などからなり、「多くの命や苦悩、略奪、闘争という犠牲によって民主主義が再び正常に機能し始めてから30年以上にわたって貢献してきた三権の秩序を、根拠のない発言で脅かし続けている現況は受け入れがたい」として大統領を批判した。
 同グループはさらに「選挙システムへの不信表明はブラジルの選挙の公正さへの不信感を国民や世界に広めるもので、司法の安定性をも脅かしている」「電子投票は進化しており、ボルソナロ氏自身もその投票システムに則って5千万票以上の票を獲得して大統領に選ばれている」と記している。
 同グループは、連邦政府からの情報を要請し、「必要ならば、連邦政府がスパイ行為を行おうとしている疑惑に対する調査を行う」ことも求めると共に、「国際的な団体に選挙の監視を求めたい」との意向を表明している。
 ボルソナロ氏は2018年の大統領選で一次投票での当選を逃した時から、「不正が行われた」と主張し続けているが、3年経っても選挙不正の証拠を提示できずにいる。加えて、昨年は米国などで行われている「印刷つき電子投票」の導入を求めたが、これもブラジルが従来から使用してきた電子投票機との比較で安全性が保証出来なかったことから下院の投票で却下され、採用を見送られていた。
 選挙に対する大統領の不信発言は、5月に入ってからも軍による並行開票を要請するなど、再びエスカレートしていたが、ファキン長官が12日に「選挙を扱うのは非武装勢力」と断言したことで大統領が引き下がった形となっている。
 最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事は先週、自身が管轄するデジタル・ミリシア(ネットでの攻撃者)捜査に、大統領による選挙システム攻撃に関する捜査も加えるなどの対応を行うと発表している。同判事は選挙高裁副長官で、大統領選の最中に同高裁長官に就任することが決まっている。
 一方、ボルソナロ大統領は16日、サンパウロ市で行われたサンパウロ州スーパーマーケット協会(APAS)のイベントに参加。一旦は引き下がったかに見えていたが、改めて選挙システムや選挙高裁を批判した。また、「ルーラ氏は既に選挙結果を知ったような口ぶりだろ」との表現であたかも今回の大統領選が仕組まれたものであるかのように語ると、「落選後の逮捕なぞ起こらない」と反論も行った。

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