《ブラジル》選挙虚報演説でボルソナロに非難殺到=下議や検察、連邦警察まで=米国は逆に選挙制度を称賛

18日の会合の様子(Clauber Cleber Caetano)

 【既報関連】ボルソナロ大統領が18日に各国大使や代理を集めて行った、過去のブラジル大統領選に関する虚偽の主張は、政界や警察、検察庁にまで強い反発を招くなど大きな波紋を投げかけている。19、20日付現地紙、サイトが報じている。
 野党下議10人は7日、ボルソナロ大統領が18日の大統領官邸での会合で行った選挙不正の虚偽発言に対し、捜査を行うよう最高裁に嘆願した。
 これら10人の所属政党は労働者党(PT)、民主労働党(PDT)、社会主義自由党(PSOL)、ブラジル共産党(PCdoB)、レデ、緑の党(PV)、ブラジル社会党(PSB)だ。内6党は大統領選でボルソナロ氏と争うルーラ氏を推す連合「ヴァモス・ジュントス・ペロ・ブラジル」の政党で、PDTも同じく大統領候補のシロ・ゴメス氏の政党だ。
 これらの政党は、ボルソナロ氏の行った行為は刑法の定める「民主主義への威嚇」(4〜8年の実刑に相当)にあたるとしたほか、選挙キャンペーンを前倒しした行為を国営放送のTVブラジルを使って放映させたことを問題視している。
 連邦検察庁でもこの問題は深刻なものとしてとらえられている。19日には全国26州と連邦直轄区の検察官43人が連邦検察庁のアウグスト・アラス長官に対し、権力濫用や責任法で大統領を捜査する嘆願書を提出するという異例の事態となった。ボルソナロ大統領に指名されて検察庁長官になったアラス氏はこれまで、ボルソナロ氏に対する捜査依頼をお蔵入り、もしくは「捜査を行うも問題無し」とし続けてきただけに、今回の対応は注視されている。
 大統領選まで3カ月を切った時点で再選を狙う大統領にこのような捜査依頼が起こることは極めて異例だ。
 また、選挙高裁擁護の動きも出ており、連邦警察に関係する複数の協会が19日、選挙で使用する投票機や投票システム、選挙の透明性に関して絶対的な信頼を置いているとの声明を出した。声明に署名した団体は全国連邦警察警部協会(ADPF)、全国連邦警察犯罪鑑識官協会(APCF)、全国連邦警察警部連盟(FENADEPOL)だ。
 19日には在ブラジリア米国大使館もブラジルの選挙の安全性を保証する声明を出した。米国は「ブラジルの選挙システムは長期間かけて練られ、試されてきたものであり、南半球や世界にとっての手本とも言える、民主主義的なもの」と褒め称えた。18日に行われた会合には、米国大使館渉外担当のダグラス・コネフ氏も出席していた。
 また、最高裁のルイス・フクス長官も19日、「1996年の導入以来、不正は確認されていない」として電子投票への信頼を表明し、ボルソナロ氏の言動に不快感を示した。この日までに全27の団体が大統領への抗議を表明している。
 18日の件はニューヨーク・タイムス電子版でも報道され、大使たちが軍による選挙監視案やボルソナロ氏が負けた時のクーデター発生への懸念を表明していたと記している。

最新記事