自分で自分の首を絞める?=選挙高裁判事批判の大統領

大統領の選挙制度批判は不適切で、情報に誤りがあると語るファキン選挙高裁長官(14日付オ・ヴァロール紙の記事の一部)
大統領の選挙制度批判は不適切で、情報に誤りがあると語るファキン選挙高裁長官(14日付オ・ヴァロール紙の記事の一部)

 10月の選挙で再選できなければ逮捕の可能性さえあるとされているボルソナロ大統領が、我が身を危うくするような言動を繰り返している。
 一例は、18年選挙で電子投票機に細工がされていたとの虚報を流し、選挙高裁で議席を剥奪された大統領派のパラナ州州議フェルナンド・フランシスキーニ氏への罷免撤回判断を最高裁第2小法廷が覆した時のことだ。大統領は官邸で判決を聞き、選挙高裁や最高裁の判断を強く批判した上、「フランシスキーニ氏は正しい。私も同じ事を語っていた」と述べた。
 この発言は、選挙制度に関する虚報を流せば出馬登録抹消や議席剥奪も行うと明言した選挙高裁に対し「自分も罷免に値する事を行っていた」と宣言するにも等しい行為だ。一部のメディアは「大統領の絶望の表れ」とさえ報じた。
 その後も選挙高裁判事や選挙制度への攻撃を続け、選挙高裁のエジソン・ファキン長官がルーラ元大統領を釈放し、大統領選でルーラ氏を当選させようとしていると言い出したり、開票時には軍の平行集計が必要と強調したりしている。
 民主主義的な選挙制度で選ばれたのに、選挙制度への疑問を呈し、電子投票の信憑性を疑わせるように仕向ける大統領。9月の独立記念日には再び反最高裁を掲げた抗議行動を呼びかけるなど、自身の言動が民主主義の根幹を揺るがしているという自覚はあるのだろうか。
 大統領派の政治家にも選挙制度への攻撃を控えるよう進言する人はいるが、大統領には馬耳東風で、相も変わらず攻撃を繰り返している。
 ボルソナロ氏の言動は国外でも懸念されており、バイデン米大統領は二国間会談で、民主主義擁護や選挙結果の受け入れを求めた。バイデン氏も前任者のトランプ氏が選挙結果を認めず、引継ぎさえしなかったから、我が身に降りかかった災いの再現回避との願いもあったのだろう。しかし、こちらも馬の耳に念仏かもしれない。
 建設的な選挙実現のためにも、選挙民を遠ざけ、自身への評価を下げかねない言動を止め、選挙による民意実現を拒めば国や国民に深い傷跡が残る事、虚報で出馬資格抹消や罷免も起こり得る事などを理解して欲しいと思うこの頃だ。(み)

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