特別寄稿=『HOPE』の日本販売代理店=16歳で『ラ・フォンテーヌ』創業=ブラジル愛を貫く富沢チエコ社長=カンノエージェンシー代表 菅野英明

日系経営者の富沢(とみざわ)チエコとは

16歳で会社を創業した富沢チエコ社長

 「私はまだまだ学ぶべきことがたくさんある。一緒に働く仲間を信頼しプロジェクトや情報を共有しながら前進し発展している。昨日より今日、今日より明日、日毎に良き人を目指して絶えず自分磨きをしている」という通り、富沢チエコさんは人生すべてに前向きで企業家精神に満ち溢れた創業経営者だ。
 「1993年、9歳で日本に家族移住し来年は30周年になる。私が11歳の時に父が会社を立ち上げたので仕事を手伝うことになった。商売をやろうと決断した理由は、(私は)得意先を助けるビジネスソリューションが好きだったので、この経験を通して、16歳の時にランジェリーを生産販売するブラジルのHOPE商品と出会って会社を設立した」という。
 この会社を選んだ理由は、「商品をより快適で美しく使用できるようにという私の要望に応えてくれた」からとのこと。
 さらにHOPE商品は「私はセレクトショップを複数経営していた頃からHOPEブランドは多くのお客様から支持された商品だった。HOPE社の企業姿勢にも共感し、社会に役立ち明るい未来を築くことが出来ると思い、(起業家精神を発揮して)HOPE商品を事業のメインブランドとして取り扱う事にした」という。

HOPE商品のセールスポイントと事業概要

 「消費者の要望に最大限応えていること」と「地球環境重視の企業姿勢」。具体的にはHOPE商品は環境に配慮した下着などを持っており、土壌廃棄処分された商品は3年以内に自然分解される」とのことだ。
 店舗数は現在2店舗だがすべてHOPEブランドを取扱っている。
・百貨店(東京渋谷・西武百貨店)では付加価値の高い商品を扱う。
・レイクタウンストア(LAKETOWN-VIVREGENE-Kaze2F、埼玉県越谷市)は厳選された高品質の製品に焦点を当てたマルチブランドストア。
 取扱い商品は約1万品目。平均単価はパンティー2500円、ブラジャー5500円、1回当たりの平均客単価は1万円、購買年代層は25〜40代で、肌、体、体格を大切に、快適さを重視する女性。
 登録個人会員は2千人以上、従業員数は店頭に約7人とリモートオフィスのスタッフ(在宅勤務)8人で計15人。社名の由来は市場を意識しハイイメージ・ハイクオリティ・ハイセンスのイメージをもつ『ラ・フォンテーヌ』に決定した。
 富沢さんは「私たちは信頼できる良心的な最高の製品を選択し、人々の生活に付加価値を与える製品をお客様に届けている。最近、製品セグメントを拡大したがそのすべてに同じコンセプトが貫かれている」と説明する。

コロナ禍時代の経営

 経営に携わっているこの18年間は、損失がなく常に着実に成長してきた。だがここ2年間はコロナ禍の影響を中心に創業以来の困難に直面した。特に社員を解雇する問題だった。常々会社は従業員を守る必要があると信じていた。
 しかし、今その困難を自力で解決して経営力を向上させることができた。同時にこの期間は時短営業等で大変苦労してきたが、「こうした環境下にも負けずもっと多くの利益を上げるつもりだ。私たちはそれを行う方法を知っている」と語った。続けてコロナ禍時代を勝ち残る小売業経営のポイントとして次の4点を挙げた。
 (1)より良い人材の確保。(2)顧客はオンラインで購入ことに慣れてきたため、経営コストを削減でき販売増につなげられる。(3)世界的な地球環境保護の高まりは製品の選択に影響を与える時代であり、お客様とともにこの点に配慮して経営を行う。(4)情報の共有化をさらに加速させて、性別を問わず関係者全員に役立つ管理知識を持ってビジネスを促進させることが大切。
 現在、円相場が円安局面になっていることについては「円安傾向は輸入販売業としては歓迎できないが、高品質の製品とそれを消費者に届ける使命感をもってブラジルの輸出にも役立つはずと信じている」という。

富沢チエコの経営信条とは

 創業以来の経営心得とは「経営結果を出すために一生懸命働き謙虚さを大切にすること」。経営方針は「(1)投資を多様化する。(2)ブランド力の強化と中長期的視点からさらなるブランド開発に取り組む。(3)多くの人から得た信用を重視する」こと。
 2001年開店当初の苦労話は(1)日本市場に関する知識不足、(2)人や企業との信頼関係を築く大切さ、(3)重要な案件を人に任せた事だった。
 さらに経営の極意3カ条もある。(1)仕事を始める前に事業の市場調査と実行可能な経営立案をしっかり行うこと、(2)クライアントを訪ねる前に情報の共有化をするので必要なものを手に入れる準備が常にできている。(3)私は怠惰を嫌い積極果敢に事業計画を実行に移している、ことだ。

経営者の交流と富沢チエコの読書

 在日ブラジル企業の多くは日系企業家によって運営されている。
 ブラステル、セラードコーヒー、TMK、KOWA、WEG、Citrosucosなどの会社経営者や中小起業家50人以上とコンタクトを持っている。
 「私は子供時代に結婚し幼い頃に母親になった。なぜなら私は11歳から働き、すでに大人の世界に入っていたから」という。その10代の頃から好きだった作家や思想や哲学者の名前として、孔子、法句経、『バガヴァッド・ギーター』(ヒンドゥー教の聖典のひとつ)、キバリオン(Kybalion)、レナブラバツキー、プラトン、セネカ、エピクテトス、ギブランカーリルなどを挙げ、「私の人生観に大きな影響を与えている」としみじみ語った。

人生観と家族

 「私はまだ十分ではないが人々を助けることができる3つの原則を信じている。(1)思いやりを持ち公平であること。サポートを通じて人々が成長できるように助ける。(2)社会的及び環境的破壊で私たちの地球は利己的な人間の虐待に苦しんでいる。(3)あなたの人生のすべてのセグメントのバランス」の3点だ。
 両親は、母はブラジル生まれの純血2世、父はイタリア系とスペイン系ブラジル人なので、富沢は3世になる。少女期時代の親の教えは「父からは誠実で勤勉であれ、母からは友愛と思いやり、間違いへの寛容と許しを学ぶ」。それがいまの人生にどう役立っているのかを聞くと「すべてにおいて」と即答した。

 父はトヨタの主要サプライヤー系の協力会社の社長だが「目立つことは好きではなく、一生懸命、責任を持って働き、顧客に愛されている」という。家族全員で父の起業をサポートし、特に姉の恵子は先頭に立って働いている。「私は仲の良いよく働く我が家族を誇りに思っている」と顔が和らいだ。
 社長業として父から教わったことは「一生懸命働き、クライアントのために実直に働き、考え、勉強し、常に改善努力をしている」ことだという。

日本人とブラジル人

 富沢チエコの体験と経験が集大成された見識は、次に紹介する語録に端的に表現されている。文化属性による日本人とブラジル人の長所と短所を的確に分析して、協業化の新たな可能性にも言及している。
 《私はブラジルのテレビを見ないようにしている。それは問題が何であるかを伝えていないから。これは意識と教育があれば解決できる問題だ。日本の学校教育は道徳的及び知識的に子供を育てているように思う。ブラジルの学校は社会にとって役立つことができるような教育は十分ではなく、人々の意識改革と国の改善にプラスの影響を与えることができるのは民間部門、特に企業や経営者層に期待している》
 《社会的には、ブラジルには多くの供給力があり、日本には、作業プロセス、設計、思考に関する投資と知識のための莫大な能力がある。
ブラジル人は、ガイドラインに従えば、パフォーマンスを向上させ、非常に優れた能力と力を発揮することができるし、彼らは強くて賢明だ。また予期せぬ変化や事態に対処する方法も知っている。
 日本人は細部に気を配り、問題の予測に役立つ。ただ、考えすぎると目的達成が遅れるおそれもあるのでバランスが必要だ。すべてが100%準備されて開始する必要はない。それはビジネスの過程で調整することができるはずだから》
 《日伯間の文化土壌については注意深く見守る必要がある。日本とブラジルは多くの経験を相互に交流しなければならない。
 ブラジル人は一般的に、家族、団結、集まり大切にしており、簡単に人を許し友情を大切にし、軽く心を開いている。責任を負うことより友好的であることは、より良い生活を送るのに役立つはずだ。人生はバランスの取れた生活を送る必要があるという認識は、人々を最良の方法に導くはず。
 私はいつもブラジルのコミュニティは、人々と一緒にいること、話すこと、人生を楽しむという意味で、豊かな人間性にあふれていると思う。
 日本人はもっと軽く、もっとオープンな心を持ち、自信を持って、自分の信念や精神で生きる必要がある。完璧というものはないので、寛容さをより受け入れてほしいと望んでいる》
 《ブラジル人は商取引に適している。しかし、場合によっては、日本人から道徳的価値観、規律、組織を学ぶ必要がある。正直なところ、双方に謙虚さと善意があれば完璧なセットだと思う。問題の原因をこれで解決していく必要がある》
 最後に富沢はこう言って取材を結んだ。
 「日本は私が知っている中で最も美しい国だ。文化、教育、地域ケアは世界でも特別な存在だと思う。私が日本について話し始めると、終わりはなく、すべてのサプライヤーは日本が持つその文化や人間を尊重していることを高く評価してくれる。それは立派な道徳心を持つ美しい国だから」
 ブラジル生まれの3世が輝きのある地平線に向かって新たな日本人像を築いている。(カンノエージェンシー代表 菅野英明)


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