
「20年後には南米のSORAが1千軒を超える日が来るかもしれない」―6月25日夜、サンパウロ市パウリスタ大通りの一等地で7月半ばに開店予定のラーメン店『SORA』の開店予行イベントが行われ、ブラジルのトライオン社(大野優真社長)とジョイントベンチャーで同店を立ち上げた、株式会社トライ・インターナショナル(以下TRY社、千葉県本社)の田所史之(62歳、福島県出身)社長はそう将来の展望を語った。

当日は味噌味と醤油味の2種類が供される予定だったが、このイベントのために来伯した田所社長の「味噌味は保留」との判断で急きょ見送られ、醤油味だけになった。田所商会は日本全国の200もの味噌蔵から代理販売の委託を受ける専門業社で、味噌への妥協はゼロ。来場者からは「田所社長の味へのこだわりは半端じゃない」との声が聞かれた。
現在、世界的にラーメンブームが拡大しており、ここ数年でサンパウロ州のラーメン専門店だけで15軒に増え(https://rentechdigital.com/smartscraper/business-report-details/list-of-ramen-restaurants-in-brazil)、うち約10軒はサンパウロ市市内にあり、最大の激戦区だ。ブラジルには21軒あり、85%は個人経営で3軒が日本の大手ブランドに属し、そこにこのSORAが参入する。同データによれば平均創業年数は3年6カ月とあり、いかに急激に増えてきたかが分かる。
SORAの特徴は、日本のラーメン大手と当地の有名インフルエンサーが共同事業として始めた点だ。
TRY社は味噌らーめん専門店「麺場 田所商店」を国内に約190店舗、海外に10店舗展開しているラーメンフランチャイズ大手。そこにTikTok(yuma_ono)のフォロアーは490万人、ユーチューブは71万人、インスタグラムは84万人などを誇るインフルエンサー大野優真さん(24歳、大阪府出身)がガッチリと手を組んだ。彼はゼツリオ・バルガス財団の経営学部を今年卒業予定だ。つまり日本の本場の味と、現地の新鋭マーケティングがタッグを組んだ形だ。

田所社長は「SORAフランチャイズをブラジル発で、南米どころか世界に拡大してもらうことを期待している。今回日本から経験豊富なスタッフを3人連れてきた。味が定着し、指導を徹底するまで1年ぐらい居てもらうかも」と語ると、大野さんは「ラーメンSORAを通して、日本の味噌文化をブラジルに広めたいです」と目を輝かせた。
トライ社は日本移民100周年の2008年6月19日にサンパウロ市リベルダーデ区に「らーめん和」を出店(ヤマトグループ、Rua Thomaz Gonzaga, 87 – Liberdade)し、それを皮切りに海外展開を始めてアメリカやカナダ、2021年にはサンパウロ市2店目の味噌ラーメン専門店「味噌屋ブラジル支店」(Rua Antônio Carlos 324, Consolação)を開店。今回が3店目で、パウリスタ大通りのメトロ駅トリアノン・マスピの美容品小売店「SONEDA」の地下1階という好立地だ。
店名は、トライ社が誇る東京・高田馬場の『俺の空』店に由来。02年の日本テレビ番組「全国民が選ぶ美味しいラーメン屋さん列島最新99」で全国1位に輝いた名店だ。