
ブラジルで世界最大級の先史時代岩絵コレクションを発見した考古学者ニエデ・ギドン氏が4日未明、92歳で逝去した。同氏は北東部ピアウイ州セラ・ダ・カピヴァラの熱心な擁護者として知られ、700を超える先史時代の遺跡を発見し、壁画群を世界に紹介するなど学術界に多大な功績を残したと同日付アジェンシア・ブラジルなど(1)(2)が報じた。
1970年代にニエデ氏が発見した壁画群は、現在のブラジル領域における人類最初の定住時期に遡るとされ、高く評価されている。この発見を契機に、南米における人類の起源に関する学術的理解は刷新された。
1933年にサンパウロ州ジャウーに生まれたニエデ氏は、70年代以降はピアウイ州に身を置き、セラ・ダ・ピヴァラ国立公園の創設に尽力し、その歴史的・文化的価値の保全に力を注いだ。同園は現在、ユネスコにより「人類の文化遺産」に指定されている。同氏はアメリカ人類博物館財団(FUMDHAM)を設立し、科学への情熱と責任感をもって、ブラジルの考古学的遺産の保護と啓発に生涯を捧げた。
その功績は国際的にも高く評価されており、昨年には国家科学技術開発評議会(CNPq)、科学技術イノベーション省(MCTI)、ブラジル海軍による「アルミランテ・アルヴァロ・アルベルト賞」を受賞。
CNPqによれば、ニエデ氏は生涯を通じて700以上の先史遺跡を特定し、その中には426の古代壁画群および居住痕跡が含まれており、いずれもセラ・ダ・カピヴァラ地域における重要な発見とされている。
『ニエデ・ギドン―セルトンの考古学者』の著者アドリアナ・アブジャンラ氏は、70年代にニエデ氏が初めて同地を訪れた当時、彼女の存在が女性の社会的地位向上を象徴する画期的かつ革新的な存在であったと指摘。ニエデ氏は学術的調査と並行して環境保護の重要性を訴え続け、地域の実業家からの脅迫にも屈せず、強い意志を持って現地にとどまり続けた。同氏の働きがなければ、壁画や自然環境の保全は危ぶまれていたと強調した。
ニエデ氏は北東部の熱帯乾燥林地帯であるカアチンガの強靭な生態系に注目し、考古学のみならず地域社会の発展に寄与。北東部内陸部初の連邦大学設立も同氏の尽力によるものである。
ピアウイ州政府は声明で、ニエデ氏の遺産が地域住民の生活を変え、永く記憶されると表明。ブラジル考古学の方向性を大きく転換し、アメリカ大陸における人類最古の記録を確立したと称えた。
ニエデ氏が第24席を務めていたピアウイ文学アカデミーは声明で、「ニエデ氏はブラジルのみならず、世界の考古学界においても最も卓越した人物の一人であった」と述べ、その死を悼んだ。
MCTIより科学功労勲章グランクロワを授与されたほか、平和と環境保護を掲げるパリベル財団のグリーンプライズ、オランダ政府のクラウス王子賞、コンラード・ヴェッセル文化財団賞、ブラジル科学促進協会(SBPC)による年間最優秀科学者賞、フランス政府よりレジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを授与されるなど数々の栄誉に輝いた。