遅れるGRU空港直通電車=8月に完成開通なるか?

アエロモーヴェル(3月24日付エスタード紙の記事の一部)
アエロモーヴェル(3月24日付エスタード紙の記事の一部)

 いつになれば動き出すのか──南米最大級のハブ空港、グアルーリョス国際空港とサンパウロ州都電(CPTM)13号線をつなぐ電車「アエロモーヴェル」は、2024年初頭の運行開始を予定していた。だが延期が重なり、現段階では今年8月開通が見込まれているが不透明なままだ。サンパウロ市内から直通し、旅客の移動効率を劇的に改善すると期待されるこのインフラ計画の再延期をめぐり、構造的課題について3月24日付エスタード紙(1)が報じた。
 本プロジェクトは、グアルーリョス国際空港の三つの旅客ターミナル(T1〜T3)をCPTM13号線「グアルーリョス空港駅」と接続するもの。空港と都市圏鉄道網を結ぶ戦略的な都市交通インフラだ。
 地上約11メートルの高さに設けられた全長約2・7kmの高架軌道上を、自動運転の電車「アエロモーヴェル」が運行する設計で、1編成あたり最大200人を輸送可能。完成すれば、現在シャトルバスで最大45分を要する移動が、わずか約6分に短縮される。
 この車両はエンジンを搭載せず、軌道下のダクト内を循環する空気の推進力によって走行する仕組み。帆船の原理に類似した構造で、風は強力な送風機により人工的に発生させられ、車両がダクト内の気流に押される形で前進する。
 試験運行では最高時速57kmを記録し、輸送能力は最大2千人/時が見込まれている。燃焼エンジンを使用していないため、非常に静音性が高く、化石燃料の不使用により温室効果ガスの排出削減にも貢献する、環境負荷の低い輸送手段として注目されている。
 一方で、このシステムの建設には高度な技術的課題が伴い、空港が稼働している状況下で工事や試験を進めなければならないという厳しい運用制限がある。そのため工期の遅延が繰り返されており、事業主体であるコンソーシアム「AeroGRU」は、この事情を遅延理由としている。だが、行政機関や空港関係者、市民からは不満や懸念の声も上がりつつある。
 当該工事の総事業費は2億7170万レアルに上り、連邦政府と民間企業の共同出資によって賄われている。着工は22年1月、契約上では24年1月に運行を開始する予定だった。だが、昨年この予定が25年2月へと修正され、さらに8月に延期されている。
 民間航空監督庁(Anac)は予定通りに開通しないことに対して懸念し、すでに空港運営会社「GRU Airport」に対する行政処分手続きを開始している。今後、違約金などの制裁措置が科される可能性がある。
 AeroGRUコンソーシアムを代表するAerom社の最高経営責任者マルクス・コエステル氏はエスタード紙に対し、「全自動無人運転車両システム(APM)の導入は、非常に複雑な工程を伴う。高架軌道、駅舎、車両、電気設備、そして自動制御システムといった複数のサブシステムの統合が必要だ。グアルーリョスのような完全稼働中の空港においては、その統合の運用上や安全上の厳しい制約を順守しなければない」と述べている。

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