《記者の眼》淡々と語る壮絶な人力世界旅行=あまりのスケールの大きさに絶句

淡々と語る岩﨑圭一さん

 人力世界一周中の岩崎圭一さん(51歳、群馬県出身)に「一番怖かったことは何ですか?」と尋ねると、「エベレスト登頂した際、下山し始めたらすぐ道に迷ってしまい、シェルパともはぐれて、雪原の崖っぷちで独りぼっちになってしまった時です。これは死ぬなと覚悟し、『お父さん、お母さんごめんなさい』と真剣に思いました。でも冷静にと思い直して、今来た道を引き返したら人影が見え、無事に正しい道に戻ることができ、安心しました」との壮絶な体験を語った。
 岩崎さんは2002年に山口県下関市からフェリーで韓国釜山に渡って以来、世界一周に挑戦しており、中国から自転車による人力移動を始め、途中0m地点からのエベレスト登頂、ガンジス河ボート下りを経て、中東を通って欧州巡りをし、昨年3カ月をかけて単独手漕ぎボート大西洋横断を果たし、南米大陸に上陸した。
 ガンジス河川下りの動機を尋ねると、「ヒマラヤの雪が解けて川になって海に注ぐまでを、追いかけてみたかった」と説明した。「なぜ手漕ぎボートで大西洋横断を?」と尋ねると「海の広さを感じるのに人力が一番いいと思った。世界の広さを自分で納得するのには、人力が一番」とのこと。発想のスケール感が尋常ではない。
 岩崎さんによれば、自転車に約20キロの生活用具の荷物を積んで、1日平均70キロ程度移動、伯国では主にガソリンスタンドの敷地内に宿泊して自炊生活を続ける。衣服は最小限の3セット分しか持たない。

1月8日、アマパー州都マカパーにある赤道通過点にて(本人提供)

 ブラジル最北端のオイアポケからマカパーまで未舗装路で4日間、お店もガソリンスタンドもない赤道直下でペダルをこいだ。「本当にずっとジャングルで驚きました。ブラジルの大きさを実感。途中、道路工事の人や地図に載っていない民家で水を分けてもらい、皆さんに助けてもらった」と感謝する。
 今後アジアでショーをやった後、また伯国に戻り、パラナ州を通ってパラグアイのイグアスーに向かい、南下してアルゼンチン、チリから北上してペルー、エクアドル、コロンビア、中米パナマを通って北米へ。サンフランシスコから再び手漕ぎボートでハワイへ、さらに日本に向かう予定とのこと。
 話を聞くだけで、あまりのスケールの大きさに絶句、めまいがしそうだ。だが本人はいたって謙虚、力むこともなく淡々と説明する。そして「いろいろな国で良い人が多いと感じた。だからやってこれたと感謝しています」と締めくくった。(深)

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