日経新聞=宮本英威支局長が帰朝=水口さんにバトンタッチ

編集部を訪れた宮本さん(左)と水口さん

 日本経済新聞サンパウロ支局長の宮本英威さん(46歳、東京都)が、離任あいさつのため27日、編集部を訪れた。2022年の大統領選などブラジルでの取材経験を熱く語り、共に訪れた後任の水口二季さん(にき、34歳、大阪府)にバトンを手渡した。
 宮本さんは2度目の駐在で、前回は5年間滞在。今回は21年9月からの2年半を務めあげ、最も印象深い取材として左翼ルーラと右翼ボルソナロが競り合った22年の大統領選挙を挙げた。伯国の歴史上最も僅差の結果に終わり、宮本さんは予測が立てにくい選挙は「記者として大変」としながらも「とてもわくわくした」と世界中が注目した選挙戦を振り返った。
 また、選挙中はテレビ局の討論会にも欠かさず参加。「露骨な政治的やりとりがたくさん見られた」と間近で大統領たちの討論を浴びた感想を話した。
 さらに、サンパウロ市のフォルクスワーゲン工場でルーラが第一声演説を行った際には、現地で工場労働者から人気があることを確認した。対して、ボルソナロの第一声はリオのサッカースタジアム「マラカナジーニョ」で行われ、観衆は少ないものの、軍服姿が多くみられるなど一人ひとりが熱狂した雰囲気だった。「こうした体験は直接記事には書かないけど、取材を続けていく上ではとても貴重な経験になった」と現場での経験を振り返った。
 帰国後は東京の政治や官庁を担当する部署のデスクになり、米中、グローバルサウスの世界覇権を巡る動きを描く「Polar Shift」シリーズにも携わる。日本移民と関わりの深い日伯野球交流を題材とした記事の執筆予定があることも明かし、「新聞に掲載する枠は確保できたので、ぜひ楽しみにしてほしい」と紙面を通じた日伯交流に努める考えを語った。
 後任となる水口さんは大阪大学ポルトガル語学科出身で、大学でブラジルの歴史を学んだほか、卒業旅行ではリオやサルバドールなどをバックパッカーとして回った経験を持つ。25日に到着したばかりで「みんな挨拶してくれたり、お店の中でも会話があり、ヨーロッパと違ってみんな優しい印象です」と語った。
 日本では企業取材のほか、社会部に所属し、警察、検察、事件担当記者なども務めた。かつての伯国旅行経験から「土地勘があって安心」と話し、「ブラジルは様々な人によってできた国。人種民主主義が持つ課題や、矛盾などを実際に見てみたいです」と語った。

最新記事