同人誌『西風』18号を刊行=15編のエッセー等、45レで販売

『西風』18号の表紙

 西風会は9月、同人誌『西風』18号(266頁)を刊行した。
 巻頭言「不条理ということ」では《一方で理想論を唱えつつも、人類は同時に不条理なことを平気で繰り返している》と問題提起し、《最悪のシナリオとして人類は、いずれその〝優秀〟さ故に、自分たちの社会を徹底的に破壊することによって結局、最後には自滅していくという可能性も十分あり得る。そう考えると人類自体もやはり、自然界の動かぬ法則に従って知性ではなく、本能の部分に大きく影響されていることになろう》とし、それを乗り越えていくことが《我々人類に課された重すぎるほどの、そして耐えがたいほどのテーマ》と締めくくる。
 「お守り―新京の遠い空―」(古庄雄二郎)には満州出身者ならではの壮絶な体験が書かれている。1945年8月、満州の首都、新京で当時9歳、小学校3年生だった古庄さんは、両親から首にお守りをかけられ、この中には日本の祖父母の住所がある、もし家族がバラバラになったらそこへ帰りなさいと言われ、最後に真剣な表情で「中に青酸カリという薬も入っています。最後の手段になった場合は、これを飲めば死ねます」と言われた。
 《なぜかこの時の部屋にあった絨毯の色と模様が、今も鮮明に記憶に残っている》と書かれている。さらに後日談が繰り広げられ、物語に深みを与えている。
 「民族のモザイク模様アメリカ西部の人々」(中島宏)は、米国西部人の気質を読み解くという興味深い試み。米国西部の気質を《現代のカウボーイの末裔たちは、総体的に見て大人しく、紳士的である。いわゆる西部劇でのカウボーイたちの持つ、ぶっきらぼうで荒くれたようなイメージとはまるで違う》《その思考の特徴は一匹狼的なタイプで独立独歩という面が強く、集団におもねることなく甘えることもなく、自分の生き方を明確なものとしてきちんと捉えている》などと描写する。
 15編の深みのあるエッセーや小説、社会時評や論考など充実した内容。同会は会員が毎月1回集まり、様々なテーマについて議論する私的な研究会。今号から1冊45レアルで、フォノマギ書店(11・3104・3329)や本紙編集部で販売する。問い合わせや投稿の連絡は中島宏さん(メールnakashima164@gmail.com)まで。

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