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同人誌『西風』17号刊行=読み応えある20作を掲載

17号の表紙

 西風会は5月、同人誌『西風』17号(262頁)を刊行した。巻頭言『森林浴』では《文明が高じていくと人間の頭は偏った方向に向かい狭い視野の中に蟄居してしまい、そこから先はさらに思考の範囲が狭まっていく。近代の世界でもなお繰り返し起きつつある非常識としか思えない戦争という行為も、人類が持つ心が大自然に逆らうようにして急速に干からびていくことへのこれは、明らかな警告なのではないだろうか》と論じる。
 冒頭の『カナダ便り』(ウィルソン夏子)には衝撃的な実話が紹介されている。長年の友人から電話があり、夫に受話器を渡し、用事を済ますために家を出た。帰宅してから、夫に「どんな話をしたの?」と尋ねると、「彼は今日、午後三時に息を引き取るそうだ」と伝えられた。カナダでは尊厳死が法的に認められており、処置の行われる5時間前に別れの電話をしてきたのだという。
 『大地に生きる人々』(中島宏)は、日本から来たあるテレビ局の取材班が戦後移住の人に「ブラジルに移住してきたことが良かったか」と質問していた映像を見て、「日本に留まっていた方が幸せになれたんじゃないかという先入観のようなものが感じられ、そういう身勝手な目線からの質問は、相手に対して失礼じゃないか」との見方が紹介されているなど、興味深い一文となっている。
 同会は会員が毎月1回集まり、様々なテーマについて議論する私的な研究会。同誌には小説やエッセーなどが掲載され、今号には読み応えのある20作が掲載されている。本書では論文やエッセー、小説、社会時評などの投稿を受付けている。購読希望者には無料で配布。入手希望、投稿の連絡は中島宏さん(メールnakashima164@gmail.com)まで。

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