『楽書倶楽部』第70号=第5回親睦会、充実の最多168頁

『楽書倶楽部』第70号

 日毎叢書企画出版(前園博子代表)の『楽書倶楽部』第70号が10月に発行され、過去最多168頁もの分厚さとなった。8月27日に開催された第5回親睦会のグラビア、主催者や来賓の挨拶等が20ページ余りに渡って紹介されている。
 毛利律子さんの講演内容からは、ソローの清貧思想に関して《本当の豊かさを知るためには生活を見直す自己訓練が必要と考えます。中国の老子の思想から学び「少欲知足」の精神に基づいて、日常生活を見直し、無駄を無くそうと提唱しました。今日世界が物に溢れ、環境汚染は最悪の事態に陥ったことへの先駆的警告です》などと紹介されている。
 伊藤喜代子さんの「時代の同船者」は、バストスで育った幼少期を振り返って《60年前、私は土人だった》と書き始める。「ヨ等のところでもカザメントがあるバッテンいかんとなんべぇナ」とコロニア語を並べ、新来移民がくれたナイロンの靴下のさらっとした肌触りの驚きを「これが日本という国から来たもの!土人の子が手の感触で感じ取った日本だった」と記した。
 山田澄子さんの「没イチ恋物語り」はとても素敵な大人の恋愛談だ。夫に先立たれて2年、250キロ離れた町に住むYさんから「貴女と恋人になりたい」と言われ、毎日1時間ずつ話をしましょうと電話がかかってきた。「よくこんなに話題があるものだ」と思いながら、半年が過ぎたころ逢ってみようということになり、ちょうと中間ぐらいの町に亡夫の墓があることから、彼が「まず墓前で交際を報告する義務がある」と言い出した。山田さんは「ただの男と女の話だけではないと嬉しくなった」という。墓参りの後、彼は車を途中で止め「すみません、キッスをさせてください」―続きは本文で。
 石田勉さんの「スタンダード・エレートリカ社へ入社②」には《(給料の支給係は)私の顔をじーと見ていたが分厚い給料袋を渡してくれた。他のブラジル人が受け取る給料袋は薄っぺらだったので複雑な心境になった》などの驚くべき体験談も。
 同出版事務所(サンパウロ市グロリア街332番3階32号室)は年末まで開いているが、本年は今号が最終号。次号の原稿締め切りは来年1月10日。購読申し込みや作品投稿についての問い合わせは前園博子さん(電話11・3341・2113、Eメールnitimaisousho@gmail.com)まで。

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