《ブラジル記者コラム》バービー・ブームも支える!=ゲイ文化の台頭ぶり

映画「バービー」(ワーナーブラジル公式)

 現在、全世界で話題沸騰中の映画「バービー」。本国アメリカでは興行成績歴代24位となる1億1550万ドルを公開3日間で叩き出すほどの人気ぶりだが、ここブラジルでのブームはさらに凄い。公開日の20日に2270万レアルを売り上げ、2014年以降にブラジルで公開された全映画中、2位の記録を打ち立てた。これは全世界史上最高売り上げを記録したアヴェンジャーズ・シリーズ「エンドゲーム」(2019年)に次ぐものだ。
 その勢いは街を歩いても確かに感じられた。電車内、ショッピングセンターの壁、レストランやスーパーのセール対象商品も、すべてがピンク色。熱狂の度合いで言えば世界一かもしれない。
 ただ、コラム子にはブラジルでこのようなバービー現象が起こることは少し予想できていた。それは、バービー人気を支えている要因の一つに「LGBT人気」、とりわけゲイからの支持が熱烈というものがあるからだ。
 今現在のブラジルは未曾有のゲイ文化の盛り上がりをみせている。それはバービーに限ったことではない。ロラパルーザやプリマヴェーラ・サウンドなどの大型音楽フェスティバルでも、もっとも人気があるのはゲイ好みする女性ソロアーティストだ。
 女性ソロアーティストのライブ会場の歓声の大きさや熱狂度は桁違いで、今やフェスの出演希望アンケートでは圧倒的に女性ソロアーティストがリクエストされている。
 国内芸能人の人気を見ても、パブロ・ヴィッタルやグロリア・グルーヴのようなドラッグクイーン歌手が大人気で、ユーチューバーでも、とりわけ人気の高いゲイ、ドラッグクイーンらがオピニオン・リーダーとして存在感を放っている。
 こうしたゲイ文化の高まりはサンパウロ市の街中でも感じられる。市内最大の繁華街パウリスタ大通りといえば、昔はお堅いサラリーマンの街というイメージがあった。ところが1997年に同大通りでゲイ・パレードが始まってから変わり始め、今ではアウグスタ街、フレイ・カネッカ街が一大ゲイ・タウンと化しており、そのイメージが日常にも定着しつつある。
 来年にはサンパウロ市市長選が行われるが、現状で一番人気はギリェルメ・ボウロス氏。彼自身はLGBT関係者ではないが、女性、同性愛者、トランス議員を多く抱える社会主義自由党(PSOL)のリーダー格だ。ゲイ文化の盛り上がりが、ブラジル最大の都市の政界にまで及びつつある。(陽)

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