フェイクニュース法案=IT企業や福音派が反対=下院投票が無期延期に=グーグルが検索結果偏向?!

1日のグーグル(複製)
1日のグーグル検索画面

 ネット上でのフェイクニュースを規制する法案「PL2630/2023」の下院での投票が、グーグルをはじめとした大手プラットフォームや福音派議員グループなどの反対キャンペーンの影響で無期延期となった。2日付フォーリャ紙(1)などが報じている。
 今回のPL2630は、虚報拡散が起きたと判断されたSNSのプラットフォームが、法の定める規定に従わず、投稿やプロフィールの放置などを行った場合に罰則を科すことまでが盛り込まれており、審議前から物議を醸していた。
 1日、グーグルはトップ・ページの検索ボックスの真下に「伯国のフェイクニュース法案は何が真実で何か嘘かの混乱を招く」という文書のリンクを載せた。そこをクリックすると、グーグル・ブラジルの政府関係ディレクター、マルセロ・ラセルダ氏による法案への抗議声明が出てくるようになっていた。リオ連邦大学の研究所 (NetLab)調査では、グーグルで同法案関連の検索をした場合、反対意見を多く表示するようにアルゴリズムを変更していた証拠があると発表している。
 また、TikTokもPL2630に関する動画の音声を消去するなどして、同法案に対する抗議活動を行った。
 グーグルによる抗議は翌2日、連邦政府からの苦情を受け、撤去された。だが、グーグルや福音派議員グループの抗議は、この日に予定されていた下院での投票を先延ばしさせる結果を導いた。
 2日の下院での審議延期は、PL2630の報告官のオルランド・シウヴァ下議(ブラジル共産党・PCdoB)が「内容の変更による投票の延期」を申し出た後、自由党(PL)以外の政党が賛成したことなどで決まった。
 この背景には、アルトゥール・リラ下院議長(PP)が与党側の政党リーダーたちを集めて行った会議があった。連邦政府リーダーのジョゼ・ギマリャンエス下議(労働者党・PT)はこの日の投票にこだわったが、リラ議長は「法案の廃案はしない」との約束付きで「承認が見込めるタイミングでの投票を」と語ってリーダーたちを説得させた。
 一方、最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事は2日、グーグル、メタ、スポティファイ、ブラジル・パラレロといった大手のプラットフォームの社長に対し、PL2630に関する立場を5日以内に、連邦警察に報告するようにとの命令を出している。
 今回の審議延期をめぐり、フォーリャ紙は「極右派とプラットフォームの勝利」と報じている。その一方で、ネット上では「大企業であるプラットフォームがフェイクニュースを支持している」と反発を示す声も目立っている。
 今回のPL2630では、こうしたプラットフォームの他に福音派グループも強い反対運動を起こしており、そこも法案通過の課題と見られている。ただし、同法案を支持する福音派やカトリックのリーダーたちは2日、早期承認を求めて下院に押しかけている。

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