音楽フェスティバル都市となったサンパウロ市

音楽フェス「ザ・タウン」のロゴマーク

 これまで「人口は多いがレジャーがない」と言われがちだったサンパウロ市。たしかに、風光明媚なビーチのあるリオ・デ・ジャネイロ市に比べるとサンパウロ市は自然や風景での見せ場はほとんどない。「ただ都会なだけの街」という印象が強いのは確かだ。
 だが、そんなサンパウロ市が近年、「文化都市」として急浮上しそうな勢いにある。今のサンパウロ市は国際的に見てもかなり異例な「国際音楽フェスティバル多発都市」になりつつあるのだ。
 まず、サンパウロ市では毎年3月に「ロラパルーザ・ブラジル」が開催されている。3日間で30万人を動員する同イベントは他州や南米諸国の音楽ファンにとっては羨望の存在だ。数年前からは市政府も積極的にロラパルーザを観光イベントの目玉として売り出しはじめている。
 そこに昨年、スペインの大型音楽フェス「プリマヴェーラ・サウンド」のサンパウロ市版開催が加わった。ロラパルーザも元は米国シカゴの音楽フェスの南米版だ。国際的な有名音楽フェスが2つも行われる都市として、音楽ファンからのサンパウロ市への注目度はさらに高まった。
 2023年、「文化都市」としての進化はさらに加速した。リオが誇る国際音楽フェス「ロック・イン・リオ」のサンパウロ市版「ザ・タウン」が9月に開催されるのだ。「ロック・イン・リオ」は80年代から人気を博す老舗的存在。「ザ・タウン」にも早々に注目が集まっている。
 驚くことに、音楽フェスの増加はこれにとどまらない。リオで昨年から小規模に始まったMITA(ミッタ)フェスティバルが進化を遂げ、国外から豪華なゲストを招いて6月にサンパウロ市でも開催することになった。C6銀行が主催するジャズや大人向けロックの音楽フェス「C6フェスト」の5月開催も決まった。C6は新参勢力とは思えないキャスティング力で国内外から出演者を多く招いている。
 そしてフェス以外にもコールドプレイやザ・ウィークエンドといった世界的人気アーティストの単独公演も多い。
 サンパウロ市の音楽ファンからは「こんなに来られても金がない」との喜色入り混じった悲鳴があがっている。たしかに、音楽ファンの懐事情を考えると、かなり供給過多ではある。だが、サンパウロ市の観光収入としては、かなりの貢献となっているのは確か。市は新たな観光開発の大きなチャンスを迎えている。(陽)

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