《ブラジル》アマゾンはスターリンクなしでも実態把握=大統領との会談は二の次?=問題は監視機関の弱体化

過去10年間の法定アマゾンの森林伐採面積の推移(20日付UOLサイトの記事の一部)

 ボルソナロ大統領がサンパウロ州内陸部でのイベントで米国の実業家イーロン・マスク氏と会談した20日、ファビオ・ファリア通信相が、「マスク氏は法定アマゾンの実態を知りたくてブラジルに来た」「有名人達はアマゾンの森の悪い面ばかり吹聴している」と語ったが、実態は政府の発言とはまるで異なると20~21日付現地サイトが報じた。
 マスク氏の訪問は法定アマゾン全域を覆うネットサービスを巡る企業家との会合が主目的で、大統領との会談は二の次だったため、会談はサンパウロ州内陸部のイベント会場で行われた。同氏は航空技術院(ITA)の学生とも質疑応答を行った。
 同氏は環境問題に関心を持っており、同氏が経営する会社の衛星網「スターリンク」を使って法定アマゾンの監視に参加すると連邦政府との会見で発表されたが、環境関係の専門家は「同氏の持つ衛星網の助けを借りなくてもアマゾンの実態は分かっている」とし、「足りないのは監視活動であり、監視機関の参加だ」と主張した。
 アマゾンの監視活動には国立宇宙研究所(Inpe)などのシステムが使われており、スターリンクの参加がなくても十分な監視ができている。現在使われているのは、政府公式システムでもあるInpeのProdes(年間データ作成用)とDeter(監視支援用の日次データ提供用)と、アマゾン人間・環境院(Imazon)のSAD(30日毎のデータ発表)、植生や土壌の状態の年次報告用のMapBimasだ。
 だが、ボルソナロ大統領はInpeのデータが政権の環境政策に沿わないとして責任者を更迭するなど、就任初年から環境問題で衝突を繰り返し、森林伐採や森林火災は拡大の一途にある。法定アマゾンでの森林伐採や森林火災増加は国際的な批判の的となり、諸外国からのアマゾン基金の支援が止まっている。
 現政権での森林伐採拡大を示す一例は、6日にInpeが発表した、4月の森林伐採は年頭の4カ月間では史上最多、昨年同月比では74・4%増の1012・5平方キロという報告だ。月間伐採面積が1千平方キロを超えるのは乾季でもごく稀で、雨季では初だ。
 1~4月は3月こそ昨年3月を下回ったが、1月は昨年同月の5倍、2月も61・8%増と昨年を大幅に上回っている。昨年8月以降は10、1、2、4月が新記録更新で、7月までの年間伐採量が昨年に続く1万平方キロ超になるのは確実と見られている。

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