50%関税なら米国コーヒー危機=互いに代替国探しは困難

ブラジル産コーヒー豆(Foto:kelsen Fernandes/Fotos Publicas)
ブラジル産コーヒー豆(Foto:kelsen Fernandes/Fotos Publicas)

 トランプ大統領が発表したブラジル産製品への50%関税が8月1日から施行されると、米国のコーヒー市場に深刻な影響を及ぼす可能性が高い。米国は世界最大のコーヒー消費国であり、その供給の約1/3をブラジルに依存しているため、供給不足と価格高騰は避けられないと予測されている。専門家は、他国からの代替供給が容易ではないことを指摘しており、もしブラジル産コーヒーが市場から消失すれば、米国内でのコーヒー取引は混乱をきたし、消費者への負担が一層重くなると警鐘を鳴らしている。10日付G1(1)が報じた。
 影響はすでに現れ始めており、ニューヨークで取引されるアラビカ種コーヒーの先物価格は、トランプ氏の関税発表翌日の10日、前日比で3・5%以上上昇した。アラビカ種は米国が最も多く輸入する品種であり、ブラジルが世界最大の生産国であるため、今後50%関税が実施されることでブラジル産コーヒーの供給が減少すれば、さらに価格が高騰すると予測されている。(2)
 米国内では消費されるコーヒーのわずか1%しか生産しておらず、外部からの供給に大きく依存している。ブラジルは世界のコーヒー供給の40%を占め、米国はその34%(60キログラム袋換算で約800万袋)を輸入している。コゴ・コンスルトリア社によると、この新たな関税が実施されれば、ブラジル・米国間のコーヒー流通は「ほぼ不可能」になり、米国のコーヒー業界は他の供給国を探さざるを得なくなる。だが、それらの国々の生産規模は小さく、価格高騰のリスクが高いという。
 この問題を示す一例として、ブラジルとコロンビアのアラビカ種の生産量差が挙げられる。ブラジルは年間約4千万袋を生産するのに対し、コロンビアは1200万〜1300万袋と3分の1程度。生産規模に大きな差があり、専門家はコロンビアがブラジルの生産量を補完することは難しいと指摘。
 コーヒー価格はすでに、ベトナムなど主要生産国での気象要因による収穫不良、国際的な物流コストの増加、世界的な需要過多という複数の要因が重なり、上昇が加速している。米国政府のデータによると、24年6月〜25年5月のコーヒー価格はすでに32・4%上昇した。
 コーヒー輸出業者審議会(Cecafe)のマルコス・マトス事務局長は、米国の消費者の懸念が高まっていると述べており、米国の輸入業者はトランプ政権との対話を求める以外に選択肢がないという。4月には、米国コーヒー協会(NCA)のウィリアム・マレー会長が、関税免除を求めて大統領府と協議していることを明らかにした。当時、ブラジルに対する関税は10%であり、現在もその額が適用されている。
 ブラジルの輸出業者にとっても深刻な状況だ。最大の輸出相手である米国を失えば、それを代替えする新市場を探す必要があり、候補としては中国、インド、インドネシア、オーストラリアなどがあるが、完全に補完できるかは不明だ。
 ブラジルコーヒー産業協会(Abic)やCecafeは、外交的解決を提案しており、ブラジルはコーヒー業界の利益を守るために戦略的な外交を進めるべきだと強調している。マトス氏は、NCAと連携し、トランプ政権との対話を進めていると語り、「最終的に負担を強いられるのは米国の消費者だ」と結んだ。

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