マイゾウ・メーノス(まあーまあー)の世界ブラジル(21)=サンパウロ 梅津久

第14話
ブラジルのジェスチャー

 ブラジル人は人と会話する時に、よく手を動かし、手振り身振りで話します。会話を楽しく進めるため又は、良く理解するためにはジェスチャーを覚えると大変助かりますし、言葉にしなくても意思を相手に伝えることが出来ます。
「待て」
 開いた手のひらを相手に向け胸の位置に上げる。「(ごちそうさま)もうお腹一杯です」の場合や、勧められたものを拒否する場合は、手を胸の高さまであげ、手のひらを相手に見せるようにして「ノン、オブリガード(ありがとう)」と言えば良い。
「美味しい、うまい」
 特に料理の味が良いことを表すには、耳たぶを親指と人差指で挟んで擦ってみせる。日本で熱い物に触った時「あちっちー」とやる仕草。さらに強調するには腕を頭の後ろ側から回して反対側の耳たぶを挟む。素敵な女性の場合、その女性の方を見ながらこのジェスチャーをする。但し男性の仲間だけで、相手の女性や、他の女性がいる時にやったら、ハンドバックが顔に飛んできますから要注意。
「おめでとう、でかした」
 祝意を表現する時は自分の両手を胸の高さで握り合わせて上下に振って見せる。または、日本と同じく拳を高く振り上げる。
「良い、ありがとう、OK」
 このジェスチャーは日本やアメリカと完全に違う。ブラジルでは握りこぶしで親指だけを出して、その親指で上を差す。両手でやったら最高の意になる。日本人は親指と人差指で輪を作るが、ブラジルでこのジェスチャーは肛門、同性愛(ホモ)を表現するので絶対に使用してはならない。また、だめな場合、良くない時はこの親指を下に向ければよい。まあまあの場合は親指が横になる。
「ダメ、ダメ」
 手を握った形から人差し指だけを立てて、人指し指を左右に振る。
「まあーまあー、はっきりしない」
 胸の高さで手のひらと甲を裏表に切り返す(回転させるような格好で)。これはマイゾウ・メーノスの世界のジェスチャーです。
「タイム、ちょっと時間をください」
 片方の手のひらを下にして開いて、そこに反対の手を開いて押し付けTの形を作る。
「会計お願いします」
 これも片方の手のひらを開いて手帳に見せかけ、反対の手でペンを握ったようにして文字を書くような仕草をする。
「競り合っている、仲が良い」
 左右の手の人差し指を前に出してお互いにすり合わせるようする。
「半半、儲けを半分に分ける」
 片方の手で人差し指と中指を開き(Vの字)、その間に反対の手を開いてナイフの格好をして、開いた片方の手の人差し指と中指の間で細かく切る振りをする。
「わかった、そうだ」
 中指と親指を擦ってパチンと音を出す。
「お金」
 親指と人差し指をすり合わせる仕草。日本では親指と人指し指で輪を作るが、先に述べたように、下品な表現になるので使用厳禁です。
「わからない」
 手を広げて相手に見せながら両腕をダラーンと身体の左右に垂らして、首を縮める。または、両方の手をお腹の前に持っていき、片方の手の甲を反対の手の平で叩く格好を交互に行う。
「食べる」
 日本では茶碗をもって箸で食べる仕草をするが、ブラジルでは手の平を上にして口元に持っていき指先を折りながら口に風を仰ぐように何回かする。
「もうたくさん」
 これ以上食べられない、手を広げて手の甲をあごに擦りつける様な仕草で「喉まで一杯です」をする。これで相手はこれ以上勧めません。首に持っていくと、「殺されるぞ」の意になるので注意。
「早く」
 人差指と中指を擦り合わせて音を出しながら、腕を上下に振る。
「ごますり、機嫌取り」
 片方の手を広げその上で、反対の手で拳を作り、その拳を立てにして広げた片方の手の上でくるくる回す。
「ヤッター、ざまーみろ」
 右手を左腕の上腕にのせ、その左腕の力こぶを見せる様に腕を折る。
「注意された、叱られた」
 プッシャ・デ・オレリョ(耳を摘まれた)という意味で、前記の「美味しい」と同じ様な仕草ですが、耳たぶを擦るのではなく、耳たぶを下に引っ張る仕草です。大変怒られる(全員で叱られる)表現としては、両腕を一旦前に出して、拳を握ったまま、両脇腹にグッと引き寄せるジェスチャーをする。これは、セックスで相手を引き寄せる意味があり、下品なジェスチャーであるので親友の仲間同士でしか使えない。
「だれかを呼ぶ」
 レストランでウエーター(ウエートレス)を呼ぶ、後から遅れて来た友人を呼ぶ、会社で誰か遠くにいる人を呼ぶ時、日本では手の平を下にして招き寄せるジェスチャーをするが、これはブラジルでは「トレッパ」と言って、「女に覆いかぶさる」「肉体関係を持つ」という意味になるので、使ってはならない。ブラジルでは反対に手の平を上に向けて招き寄せるジェスチャーをすること。レストランでウエーターを呼ぶときに「プッシュー」と口で音を出す習慣があるがこれは下品な仕草となっているので街角のレストランでは良いが、きちんとしたレストランでは使ってはならない。
「嘘つき」
 人差し指を中指に重ねて(交差させて)相手にみせる。
「おい、おい 注意しろよ」
 片方の手で握り拳を作り、反対の手で作った握り拳に蓋をするように軽く叩く格好。これは、入れ込む(ようするに、セックスで締め付ける)という意味であり、さらにギュット押し付ける格好になると、さらに強く締め付ける意味合いになる。すなわち、「注意しないとギュット締められるぞ(注意されるぞ)」と意味になるが使うときは要注意である。
「一杯ある」
 手のひらを開け、人差し指から小指を合わせ、それに親指を何回か叩く仕草。両方の手でやると“非常に一杯”の意になる。
「お前下手だな」
 中指を立て、他の指を丸めて、手の甲を相手に見せるジェスチャーは、男の性器を意味し、相手を侮辱する時に使う。例えば、車を運転していて、運転の下手な相手に向って投げかけるときに使う。私用する男性の性器が大きいときは、右手で拳を作り、作った拳の手の平の方を上に向け、左手を右手の力こぶの上に置いて、右手を折り曲げる。「やったー、ザマーミロ、見たかおれのもっと大きいぞ」。
「怒っている」
 これは日本と同じか。両手の人差し指を使って、頭に角の形をつくる。相手が怒っているとなる。「おい、奥さんに怒られるぞ」。
「よく見ているぞ」
 人差し指と中指でVの字を作り、それを自分の両目に刺すように両目の前に持っていってから、そのまま相手の方に向ける。
「守り神」
 親指を人差し指と中指の間に入れる。
また、もっとも下品でいやらしいしぐさとしては、握手したまま、指で相手の手の平をなでること、これは相手をセックスに誘う意味になり、男女間では女を女郎扱いすることになるし、同性間では同性愛に誘う意味合いになるので間違っても握手する時に指を動かしてはならない。
 ぜひ、ジェスチャーを交えて会話を楽しんでください。

 

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