
サンパウロ市中心部のチラデンテス大通りで24日(土)、バイクによる旅客輸送サービス「モトタクシー」を利用していた22歳の女性が、走行中に転倒して死亡する事故が発生した。事故当時、前方に停車中の車のドアが突然開き、バイク通行帯を走行していたバイクが衝突して転倒。後部に同乗していた女性が車道に投げ出され、別の車に轢かれた。サンパウロ市ではこのサービスは市条例で禁止されているが、司法判断により一時的に運行が認められていた。制度上の混乱が続く中で起きた重大事故となり、今後の安全対策や制度のあり方が改めて問われていると25日付G1など(1)(2)(3)(4)が報じた。
被害者のラリッサ・バロス・マッシモ・トーレスさんはこの日、勤務先のイベントを終えて帰宅するため、配車アプリ「99」を通じてモトタクシーを手配した。事故が発生したのは午後11時30分頃、赤信号で停車していた車の後部座席の乗客が、バイク通行帯側のドアを突然開け、走行中のバイクが衝突。衝撃でラリッサさんと運転手は共に車道に投げ出され、その直後、通過してきた別の車両がラリッサさんを避けきれずに轢いた。ラリッサさんは病院に搬送されたが、間もなく死亡。バイクの運転手も負傷したが命に別状はないという。
警察によれば、ドアを開けて事故を起こした車も配車サービスの運行中で、運転手は「走行中に後部座席の乗客2人がふざけ合っていた」と供述。乗客は28歳の弁護士と27歳の経済学者で、1人は酒に酔っていた。事件は過失致死の疑いで捜査が進められている。
亡くなったラリッサさんは大サンパウロ市圏グアルーリョス市に在住。マーケティングを専攻した後、現在は生産工学を学びながら、金融関連企業で営業スーパーバイザーとして働いていた。遺体は27日、グアルーリョス市内の墓地に埋葬された。
配車アプリ運営会社「99」は声明で、「遺族に深く哀悼の意を表し、関係者への全面的な支援を行っている」とコメント。保険適用のほか、心理的サポートや葬儀費用の補助などの支援を提供しており、捜査にも協力するとしている。
サンパウロ市では1月にリカルド・ヌネス市長が発令した条例により、バイクによる配車旅客サービスが禁止されている。だが、同業者らがサンパウロ州地裁(TJSP)に提訴し、司法判断により一時的に運行が認められていた。
だが、今回の死亡事故を受けて26日、TJSPはモトタクシーの有料運行に対し即時停止を命じる追加の判断を下し、違反した場合は1日あたり3万レアル(約76万円)の罰金を科すとした。これにより、市内でのモトタクシー営業は再び厳しく制限されることとなった。
一方、モトタクシーを運営する「99」や「Uber」は事故当時の対応について、「司法命令に反していなかった」と主張しており、通知を受領したうえで、決定内容に関する説明をTJSPに求める姿勢を示している。サービスの合法性をめぐる法的対立は依然として続いており、今後さらに議論が高まると見られている。