
日本では高齢者の運転免許証自主返納を促す動きが進む中、ブラジル南東部ミナス・ジェライス州では100歳を超えても自らハンドルを握り続ける異例の高齢ドライバーが注目を集めている。1923年5月27日生まれの102歳、ラヌルフォ・クストージオ・アルヴェスさんは最近運転免許証の更新に成功し、年齢を感じさせない明晰な判断力と慎重な運転で、自身の自由と自律を守り続けている。ブラジルの高齢者ドライバーの実態を17日付G1など(1)(2)(3)が紹介した。
ラヌルフォさんは65年前に免許を取得し、長年運転を続けている。先日、同州交通局(Detran―MG)で更新に成功し、さらに3年の有効期限を得た。日常的にピックアップトラックで農場や市内、家族のもとを行き来し、運転手を雇うことも勧められるが「迎えを頼んでも来るのは遅い。待つのは嫌だ」と運転を貫く。時速70キロを超えず走行車線を守り、「急ぐ人は追い越してくれ」とマイペースな姿勢だ。
ラヌルフォさんは若い頃から労働に励み、1941年にミナス・ジェライス州へ移住。7人の子供を育て、現在は祖父、曾祖父、高祖父として家族に囲まれ、自立した生活を送る。日々の判断や農場の管理も自ら行い、自由と尊厳を何より重視しているのだという。
免許更新時の健康診断も問題なく合格した。医師は明晰な精神状態と意欲を称賛し、運転時の眼鏡着用を勧めた。ラヌルフォさんは「3年後にまた更新に来る」と笑顔を見せた。
2020年に施行された法律により、ブラジルでは70歳以上のドライバーは3年ごとに免許の更新が義務付けられている。同州では、過去5年間に90歳以上の人が208人、免許を更新しており、高齢ドライバーの増加傾向が顕著だ。
ブラジル内では高齢者ドライバーは決して珍しい存在ではない。サンパウロ州カンピーナス市には100歳以上の免許保持者が414人もいる。(4)さらにリオ州のパウロ・ドス・サントス・レイテさんは、90歳を超えてなお現役トラック運転手として活躍し、60年以上のキャリアを誇っている。(5)こうした事例は、高齢者の運転が単なる個人の問題にとどまらず、社会全体で安全と自由を支える課題であることも示している。
70歳以上の高齢者が免許を更新する際には、視力や聴力、認知機能の検査を含む健康診断が義務付けられており、更新可否の判断は医師に委ねられている。ブラジル交通法には運転可能な年齢の上限は定められておらず、高齢であること自体が運転の障害にはならない。(6)(7)
ラヌルフォさんの姿勢は、高齢化が進む現代社会において、個人の自由と安全、そして社会的責任のバランスをいかに保つべきかを改めて問うものだ。医療関係者や行政機関は「加齢による身体的制約を理解しつつ、適切な支援と本人の意欲があれば、高齢者も安全に運転を続けることが可能だ」との見解を示している。