ブラジルの株式市場イボベスパ指数は、世界的なリスク回避の流れを受けて急落し、前日比2.96%安の127,256.00ポイントで取引を終えた。1日で3,884.65ポイント下落し、2024年12月18日以来の最大下落幅となった。週間では3.52%安となり、2022年12月中旬以来の下げ幅を記録した。
外国為替市場でもブラジルレアルは大きく下落し、米ドルに対して3.68%安の1ドル=5.836レアルと大幅安。米国の長期金利低下を背景に、ブラジルの将来金利(DI)はまちまちの展開となった。
■米中関係悪化が市場直撃 恐怖指数VIXがパンデミック以来の高水準
市場の混乱は、米中間の貿易摩擦が激化したことによるものだ。トランプ米大統領は2日、全ての輸入品に最低10%の関税を課すと発表し、中国製品には34%、EU製には20%など、主要貿易相手国に対して高率の関税を導入。これに対し、中国は4日、米国製品に同じく34%の報復関税を発表した。
この「関税戦争」が引き金となり、シカゴ・オプション取引所が算出するVIX(恐怖指数)は前日比50.92%高の45.31まで上昇。これは2020年3月のコロナショック以来の高水準であり、市場の不安心理が急速に高まっていることを示す。
■米株主要指数は2日連続で5%超の暴落、「セブン・マグニフィセント」も時価総額大幅減
ウォール街では、ダウ平均が5.50%安の38,314.86、S&P500が5.82%安、ナスダックは7%近く下落し、過去最高値からの下落幅が20%を超え「弱気相場(ベアマーケット)」入りとなった。特に、米国を代表するハイテク株群「セブン・マグニフィセント(7銘柄)」――マイクロソフト、テスラ、NVIDIA、アップル、アマゾン、メタ、アルファベット――は、2日間で合計1.83兆ドルの時価総額を失った。
一方、安全資産とされる米国債への資金流入により、長期金利は大幅に低下した。アゴラ・インベストメンツは「投資家はパニックモードに入り、安全資産に殺到している」と指摘した。
■ブラジル市場も血の海 原油安・鉄鉱石安でValeとPetrobras急落
ブラジル市場でも主要銘柄が軒並み下落した。資源大手ヴァーレ(VALE3)は3.99%安、石油大手ペトロブラス(PETR4)は4.03%安と原油価格の続落に引きずられた。銀行株も軒並み2%前後の下落となり、イタウ・ウニバンコ(ITUB4)は2.60%安。
小売大手マガジンルイザ(MGLU3)は8.22%と急落。唯一目立った上昇を見せたのは、株式非公開化を発表したカルフール・ブラジル(CRFB3)で、10.77%高と市場の注目を集めた。
■米国リセッション懸念 インフレ高進と相まってFedは難しい判断迫られる
アリアンツのチーフエコノミスト、モハメド・エラリアン氏は、「米国がリセッション(景気後退)に陥る確率は50%に達した」と警告。また、インフレ期待も3.5%に上昇しており、米連邦準備制度理事会(FRB)は困難な政策判断を迫られている。
FRBのパウエル議長も、「関税の影響は予想以上に大きく、先行きの不確実性は高い」と述べ、今は「静観の姿勢が必要だ」と語った。
■来週も波乱含み 米物価指標とブラジル経済指標に注目
市場では、来週も波乱が続くとの見方が強い。米国では11日に消費者物価指数(CPI)、12日に生産者物価指数(PPI)が発表される予定。ブラジルでも小売売上(10日)やサービス業指数(11日)が公表される。
ノルド・リサーチのエコノミスト、エンリケ・ヴァスコンセロス氏は「今回の関税問題はまだ序章に過ぎず、さらなる応酬の可能性がある。今は資産を守る方が賢明だ」と警鐘を鳴らす。
今後の展開は、各国の対応とトランプ政権の出方次第。世界経済が貿易戦争による“スタグフレーション”のリスクに直面するなか、市場の緊張感は当面続く見通しだ。