エンタメ経験活かし農業を発信=徳本さんがブラジルでMV撮影=人気農業ユーチューバー

 日本の農業法人「トゥリーアンドノーフ」の徳本修一代表取締役が2月7日から15日、ミュージックビデオ撮影のため来伯した。同氏は日本で米や飼料作物を中心とした大規模農業を行う傍ら、海外で開催されている農業イベントに参加、Youtubeなどで農業に関する情報発信を行っており、国内外に多くのファンを持つ。15日、サンパウロ市を訪れた徳本さんに話しを聞いた。

 昨年2月、アルゼンチンで開催されたグローバルファーマーネットワークのカンファレンスに招待された際に出会ったブラジル人農家ヴィンセント・ビソニ・ネット氏と意気投合したことから自身2作目となるミュージックビデオの撮影をヴィンセント氏が所有する農地のあるマット・グロッソ州ガウーシャ・ド・ノルテ市で行うこととなった。今回の曲はロック調で、南米の農業技術をテーマにした持続可能な農業へのメッセージソングとなっている。
 徳本さんは鳥取県鳥取市出身。消防士を5年間務めた後、歌手を目指して上京。風呂なし共同トイレ月3万円の部屋に暮らしながら、音楽事務所にデモテープを送るなどしていた。
 ある時、芸能事務所のマネージャー募集の求人を見つけ、芸能界との繋がりを作るきっかけになると思い応募。人気タレント、デヴィ夫人のマネージャーを務めることになった。「デヴィ夫人は衣装を多くお持ちで、シャワールームもクローゼットにしていました。ある日、頼まれて鞄を取りに行ったら誤ってシャワーの水が出てクローゼットの中をびしょびしょにしちゃいました。でも、デヴィ夫人は怒らず、シャワーの閉め方を教えてくれました(笑)」と当時を振り返った。
 また「僕が海外に目を向けるようになったのはデヴィ夫人とのお仕事の影響もあると思います。デヴィ夫人は海外ロケも多く、その同行時、物乞いをしている子どもたちと出会う度に自分の無力さを痛感していました。農業は健康や命のインフラです。その時は子どもたちを助けることはできなかったけど、農業の仕事が今や未来にリンクしているといいなと思います」と語った。
 マネージャーを辞め、音楽活動を再開。徳本さんのバンドは事務所にも所属し、順調だったが、音楽の方向性の違いから解散。ソロで活動するも、自身の破天荒な行動で事務所をクビになってしまったという。
 その後、ITベンチャー企業の営業となった。
 子どもが生まれたことなどをきっかけに、24時間営業のスーパーや、何時でも食べられる食品など社会問題に関心を持つようになった。
 子どもは自然の中でのびのび育てたい、新鮮な食べ物を食べてほしいという思いから地元鳥取市に戻った。
 IT企業勤務の経験を活かし、地元産野菜の通信販売などを行うが上手くいかず、「自分で野菜を作らないといけない」と思うに至り、農家となった。
 農業も当初は失敗続きだったが、栽培品目を小松菜に絞り、延べ20ヘクタールの規模での有機栽培を実現。2019年頃に水稲に転換し、現在に至る。
 徳本さんは普段、自身で米や飼料作物を中心にした大規模農業をする傍ら、海外で開催されているグローバルファーマーズネットワークのメンバーとしても活躍している。
 更には、Youtubeチャンネルなどを使って農業機械の説明、バイオテクノロジー、海外の農業事情やグローバルファーマーズネットワークのカンファレンスの様子など、プロ農業家として現場の話を発信している。

マットグロッソ州に滞在中の徳本さんとヴィンセントさん。共通趣味、音楽で大いに盛り上がっている様子

 農業の話を真面目に語っても一般の人にはわかりずらいだろうということから、エンタメ業界の経験を活かし、Youtubeチャンネルを始めた。
 Youtubeチャンネルでは、自身で作詞作曲し、これまでの経験を歌った「I AM A FARMER(アイアム ア ファーマー)」の配信を行った。同曲での目標は、紅白歌合戦に出場し、多くの人に農業に関心を持ってもらうことだという。
 同曲は現在、再生回数6.7万回を超える人気を博している。視聴者は国内に留まらず海外からも多い。徳本さんが渡伯する数日前には、アントニオ・カブレラ・マノ・フィーリョ元農相がXで同曲のポルトガル語字幕を自ら書き起こし、拡散していた。
 2023年には、SNS活動を行う農家を顕彰するドイツ農業協会(Deutsche Landwirtschafts-Gesellschaft e.V.)から、トゥリーアンドノーフYoutubeチャンネルが佳作に選ばれるなど、トゥリーアンドノーフは世界でも影響力ある団体として一目置かれている。

取材中の徳本さん

 今回訪ねたヴィンセントさんの農場は地平線が見えるほどの広大さで、世界最大級の大きさをほこる大型不耕起種播種機を利用していた。最先端技術で穀物や大豆などを育てているブラジルのダイナミックな農業に改めて感心したという。
 更に「ブラジルの農家はリスクをとって生き残る経営マインドがすごいです」と日本の農家との違いについて語った。日本の農家は政府などからの補助金に頼った経営傾向がある。これは補助金が断たれてしまうと存続の危機に直結するリスクがある。今後、日本の農家が生き残るには、自らお金を稼ぎ、人材育成していかなければならない、そうしなければどんどん日本の農家は衰退してしまうと徳本さんは危機感を抱いている。
 徳本さんは来年、ブラジルベレンで開催されるCop30への参加を希望している。「ドイツやフランスの農業はすごく政治に左右されます。ブラジルはどうなのか。次回は政治家と話しをしたいです」と目を光らせた。徳本さんの農業に対する熱い想いは加速し続けている。
 ブラジル人農家ヴィンセント・ビソニ・ネット氏との対談を収めた動画が3日、トゥリーアンドノーフのYoutubeチャンネルで公開された(https://www.youtube.com/watch?v=xWPuuH0A22E)。

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