ブラジルの大学受験=長野育ちの日系4世の挑戦(6)=格差是正措置と高卒認定試験

 ブラジルの大学入試にはアファーマティブアクション(COTA、積極的格差是正措置)がある。
 2012年に制定されたCOTA法(Lei nº 12.711/2012)によれば、連邦大学や州立大学などの公立高等教育機関の欠員の半分を、公立高校で3年間学んだ受験者に割り当てなければならないと定めている。
 残りの半分は私立高校卒業生で、COTA法によって半分に狭まってしまった狭き門をめぐって以前よりも厳しい競争をすることになった。
 公立高校卒業生枠の中でも「黒人、褐色人および先住民族」「キロンボーラス(逃亡奴隷集落子孫)」「障害者」に加えて、それ以外に「公立学校の生徒」の4種類があり、それぞれのカテゴリーで試験結果を競う。ABC連邦大学(UFABC)では、社会的に脆弱な立場の難民、トランスジェンダーの区分も行っている。
 ブラジルでは一般的に、授業料が無料の公立高校には裕福でない層の子弟が通い、高額な学費がかかる私学高校には富裕層の子弟が通う。この法律ができる以前は、成績順に上から大学合格になっていたので、授業料がただで優秀な公立大学の入学試験合格者の大半を、私立高校卒業生が占めた。
 つまり、優秀な公立大学に入学するためには、高いお金を払って私立高校に通わせる必要があった。結果的に、富裕層しか子供を優秀な公立大学に入れられなかった。つまり、経済格差が教育格差に直結して、世代を超えて再生産してしまう構図があった。
 私の様に日本の高校を卒業した者は、普通の「私立高校卒業生」枠になってしまう。これだと厳しい競争にさらされる。そこに入る為だけでも、日本から必要書類を取り寄せる必要があり、昨年はまだ日本からの郵便物がブラジルに届かないトラブルが発生していると聞いたため、不安があった。

ブラジルの高卒認定試験「encceja」のロゴマーク

 そこでいろいろ調べてみると、8月のブラジルの高卒認定試験(encceja)を受けて合格すると「公立高校卒業者」枠として扱われるようになることが分かった。
 高卒認定試験の存在を知ったのは、試験申し込み期限の前日、なんと6月1日だった。あと1日気付くのに遅れていたら…と思うと、冷や汗が流れた。
 この高卒認定試験の試験料は無料で、誰でも受けられる。試験科目は理科、社会、英語、スペイン語、ポルトガル語、小論文。高卒認定試験の試験結果は昨年12月22日に発表され、無事合格していた。少しだけ肩の荷が軽くなった。(松永エリケさん、続く)

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