ネパール人と覗いた中東カタール〈6〉=人口の9割占める外国人側から見た内情=故郷の味提供するレストラン

カタールの老舗ネパール料理店

 現在、ドーハには15軒ほどのネパール料理店がある。市内の中心街には、一軒を除いてネパール人の経営する店ばかりが立ち並ぶ一角があり、そこには「ザ・グルカ」「ロイヤル」「ダルバル」といったレストランがネパール国旗をトレードマークに営業している。

 ドーハで最も古いネパール料理店としてよく知られているのが「エベレスト・モモ・センター」である。本国と同じ味が食べられるとの定評がある。同店は2000年にドーハの中心街にオープンし、カタールの急成長を見続けてきた。人気メニューはソースが少しスパイシーなギョウザの一種「モモ」である。
 店主はネパール人のラージ・ビクラム・シュレスタさん(52、バグマティ県ラメチャップ郡ダドゥワ村出身)。10代の時から首都カトマンズの 4つ星ホテルで飲食サービス業に従事し、家族の経済状況を向上させるため、就労ビザを取得しやすかったカタールに1996年に渡った。最初はドーハでウェイターやレジ係として働き、4年後に同店をオープンした。
 ラージさんのモットーは、「お客様の心を掴める美味しい料理を提供すること」。毎日午前8時から深夜0時まで4人のネパール人スタッフと営業し、単身で働きに来ている男性も多いため、郷里の味を求めて店に足を運ぶ客は絶えない。来客の85%はネパール人で、他にヨーロッパやフィリピン、ブータン、インド、スリランカ、バングラデシュ人なども訪れる。
 日本人でもネパールに行った人なら好きという人が多い「モモ」。本国同様のバラエティ豊かな揚げモモやスープモモ、チリモモ、サデコモモなどの他、トゥクパやチョウメンといった麺類、伝統的なメニューが取り揃えられている。ご飯やおかずはどのレストランでもお代わり自由である。注文すれば店の出入り口で目の前でスパイスを加えて出来立てのカラック(チャイ)を作ってくれる。

カタールで二つの時計を使うネパール人たち

 カタールとネパールの時差は2時間45分。「エベレスト・モモ・センター」の店内には、ネパール時間に設定した時計がよく見えるように設置されている。日本とブラジルの時差は昼夜逆転のみなので時間は分かりやすいが、2時間45分は計算しにくい。家族がネパールにいる人やネパールと仕事をしている人も多いため、連絡時間を間違えないように、腕時計にはネパール時間、アイフォンにはカタール時間というように、二カ国の時間をすぐに分かるようにしている人もいる。
 「平和で安全な国でビジネスをできるのはとても重要です。カタールではそれを実現できてきましたが、家族をネパールに置いたままカタールで一生は過ごせません。将来は母国に戻ります」と話すラージさん。滞在中に4回ほど通った中で、一回はブラジル代表のユニフォームを着ていた。ネパール人にはサッカー好きが多くブラジルのファンも少なくない。
 「夢は二人の息子に十分な教育を与え、家族を幸せにすること」
と笑顔で語った。(続く)

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