ネパール人と覗いた中東カタール〈5〉=人口の9割占める外国人側から見た内情=多様な分野で求人右肩上がり

カタールでの一般労働者の求人は右肩上がり

 現在、ネパールには約1400社のリクルート会社があり、実質活動しているのは600社ほどといわれている。現在、約36万人のネパール人が暮らすカタールにも、ネパールからの人材供給会社やエージェントが無数に存在し、大きな収益を生み出している会社もある。
 ネパール系リクルート会社で働いているネパール人の一人は、カタールではマーケティングを行い、月の半分を祖国とカタールの間を往復し、最近は一年間で約4千人の雇用を契約した。その仲介手数料の相場は一人当たり400~500米ドル。一般に最初は一人2年の就労ビザを取得して契約する。
 スーパーやレストランの店員、モトボーイ、ウーバーのドライバー、工場労働者、看護師、銀行員、警察、建物の建設やエネルギー関連企業の仕事ほか、社会の様々なセクターで一般労働者の求人がある。

アルラヘーブ社のサイト

会社の立ち上げに柔軟なカタール

 「カタールではスポンサーがいれば会社を設立するのは非常に簡単です」と話すのは、2021年にカタールで設立されたアルラヘーブ社(AL LAHEEB FACILITIES MANAGEMENT WLL)のCEOアショク・タマンさん(48、コシ州モラン郡)。
 インフラ整備の分野で質の高い人材とサービスを提供することを目的に、主に電気や土木の下請けサービス、メンテナンスサービス、人材紹介サービスを行っている。18歳から40歳までのネパール、インド、パキスタン、バングラデシュ、アフリカなどの国籍者に、高度人材から一般労働者まで幅広い就労の機会を提供する。
 インドで学校教育を受けたアショクさんは、カタールに来る前はドバイやシンガポール、インド各地を旅行したことはあったが、国外で働いたことはなかった。ネパールではリクルート会社David Foreign Recruitment Agency Pvt社で人材採用を担当し、2016年に新規事業開拓と新たなビジネスチャンスを求めて、2年契約の就労ビザを取得してカタールに渡った。カタールでは最初、同社のマーケティングを担当し、ビザを更新して現在は居住ビザを取得している。

自宅でネパールのチャパティを作るアラティさん

 アショクさんは妻アラティさん(36)とカタールで働き、ネパールにいる2人の娘や家族の生活を守っている。2030年までカタールで滞在し、その後はネパールに戻ってカタールから学んだことをもとに新しく起業する計画だという。

タマンさん(右)とサプコタさん

 アルラヘーブ社のHRマネージャー、ラム・ハリ・サプコタさん(41、バグマティ州ヌワコート郡)はカタールの良い点について、「ビジネスパーソンや投資家にとって政治的にとても安定した国」と話す。地理的にヨーロッパ、アメリカ、アジア、アフリカの中心点であることに加え、起業には柔軟で、簡単かつ低コストでビジネスプラットフォームを開くことができると強調。
 行政サービスも簡易で迅速に行われ、銀行口座の開設も簡単で、セキュリティシステムも優れており、治安も非常に良い。食費や生活費、交通費、医療費なども他の中東と比べて安いのも、アジア諸国の外国人労働者にとっては利点である。日常生活も仕事も英語ができれば十分で、公文書の作成はアラビア語になるが代理人に依頼すれば問題ないという。

 ※本連載第3回目のダカル大使のプロフィールに間違いがあった。正しくは「カルナリ州首相補佐官」。お詫びの上、訂正する。(続く、取材:大浦智子)

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