ネパール人と覗いた中東カタール〈7〉=人口の9割占める外国人側から見た内情

治安の良さは世界最高クラス

 連載7回から10回までは、カタールで個人的にインパクトを受けたことについて記したい。
 日本人にとって中東というと、何となく得体が知れず根拠のない不安を持つ人々も多いのではないだろうか。筆者も中東の国に入国したのは初めてで、女性一人でカタールに行くというと、ブラジルの身近な人々には第一声に「治安は大丈夫?」と心配された。
 しかし、事前に現地の友人から情報を得ていたため、カタール滞在中にトラブルは起こらないというそれなりに根拠のある自信を持って旅立った。
 実際にカタールの治安は世界最高クラスに良いといわれ、それは町を歩いても実感した。治安に警戒すべきサンパウロとは違い、路上で携帯電話を使用して目立つカバンを持ち歩いていても、泥棒に狙われる心配は全くなかった。
 日本では外国人労働者の受け入れが治安の悪化につながるというような印象を何となく植え付けられているが、外国人が住民の9割を占める国でありながら治安の心配がないのは、町中に設置された監視カメラによるところも大きいとのこと。もし、窃盗でもあったら、電話をすれば犯人はすぐに逮捕され、国外退去となるというペナルティも事前に示されており、秩序を保つのに役立っている。
 この治安の良さが、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、アフリカの中心点かつ通過点という地理的条件も合わさって、安全に世界的な取引のできるハブ国として重要視されるようになった。

アラビアンナイトは現実の話

 女性が夜に独り歩きしても狙われることはない空気感はあっても、特に夏場に外を歩きたくない決定的な理由はその暑さである。少し歩けばどっと汗ばむ空気の中を、男性もだが女性はもっと歩きたくないだろう。せっかくのヘアセットも化粧も総崩れだ。熱い夜の路上でたむろしているのは男性ばかりで、普通の女性の感覚ならそんな路上を積極的に一人でうろつきたいとは思わない。
 ショッピングモールやスーパーマーケット、メトロなど、一歩室内に入ればどこも先進国同様の近代的かつとても清潔な施設で、冷房も快適に効いており、そのような場所には女性たちも多く、日本やブラジルと大差ない。
 大きく違うのはその活動時間帯。夕方5時くらいまでに平日のショッピングモールに行っても、閑散としていて店がつぶれるのではないかと心配になった。一方、夜11時頃になってもショッピングモールは家族連れで活気に満ち、文字通り「アラブは夜」なのだと実感した。
 サンパウロでアラブ人のイベントに参加した時、夕食は午後11時が本格的なスタートで、深夜0時を回ってからデザートのアイスクリームを食べるという現場に複数回遭遇したが、これは紛れもなく中東の文化に由来していたのだと確信した。
 欧米スタイルの服装をしている人から全身黒い服で覆って目だけを出している女性まで、世界の縮図のような人々の風景が広がっていたが、ドーハ市内とはいえ本来は砂漠だった土地で、その日中の炎天下を歩くなら、厚化粧をするか顔も覆ってしまう黒い服を着るのが最適だと心底思った。あの太陽光線の下で肌を出して歩けば、美肌もあっという間に荒れてしまうだろう。(続く、取材:大浦智子)

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