ブラジルすき家=一号店オープンから13年=トレンド合わせ、高級肉で商品開発=(1)

青山昇弘社長

 近年、サンパウロ市のスーパーや精肉店で、売り場を区分して販売されているのが「アンガスビーフ」だ。アンガスビーフの値段はKOBEビーフ(神戸牛)ほど高くないが、他のブラジル産牛肉などよりは高価で、高級牛肉に分類されている。
 ブラジル消費者の間でも、おいしい高級牛肉といえば「アンガスビーフ」という認識は広く普及し、若者に人気のハンバーガー店などでも、アンガスビーフの使用を強調するメニューが目に留まり、その認知度は日に日に高まっている。

ワンランク上のアンガス焼肉丼

 「日本の味をそのまま提供」をモットーとするブラジルすき家(青山昇弘社長)は、2010年にメトロ・サンジョアキン駅正面に一号店をオープンさせた。今年で開業13年目になる。外食業日本最大規模のゼンショーグループ直営店として、ブラジルでは現在26店舗を展開している。ゼンショーグループは世界の外食業界でも2021年度第6位の規模を誇る。
 ゼンショー・ド・ブラジルの青山昇弘社長(42、静岡県出身)によると、日本料理の様々な食べ方を提案できるよう、現在は毎月一回キャンペーンメニューを発売し、年4回メニューの更新を行っているという。毎年、日本から商品開発者が訪れ、日本で定番の商品とブラジルで求められる商品を考慮し、新メニュー開発を行っている。

アンガスビーフを使用した焼肉丼を食べるブラジル人男性

 近年のアンガスビーフブーム人気のトレンドを敏感にキャッチし、昨年9月よりブラジルすき家全26店舗で本格的に販売を開始したのが、ブラジル産アンガスビーフを100%使用した「焼肉丼」だ。
 焼肉丼は、現地消費者に合わせた商品開発を行う中で、「シュラスコ好きなブラジル人への新メニュー」として、昨年4月からテスト販売が開始された。柔らかくタレになじみの良いアンガスビーフと焼肉丼の相性は最適ということで使用されることになった。
 高級牛肉のアンガスビーフだけに、価格は割高にはなるが、仕入れ先の信頼と協力を得て、「おいしい商品をお手頃価格で」との方針を全うすることに努め、消費者には他の牛丼と同様に気軽に親しまれている。
 焼肉丼の販売が始まって以来、メニューの表紙にはその写真が大きく掲載され、「100%アンガス」の文字が顧客の関心を惹きつける。店に行くと、満面の笑みでシュラスコ感のある焼肉丼をほおばる伯人客の姿が印象的だった。
 

アンガスビーフのロゴが入ったブラジル・すき家のメニューの表紙

肉の差別化が進み始めたブラジル

 ブラジルや南米からの食肉、水産物の輸出コンサルタントを手掛けるブラジルフードサービスの小寺健一さん(61、北海道出身)は、「ブラジルの牛肉市場の傾向が変化しつつあります。これまで主流だった自然放牧牛からトレーサビリティ(生育の経歴管理)を重視して育てられた牛の需要が高まりを見せています。より安全でおいしい肉が求められる時代になっています」と語る。
 小寺さんは34年前に日本の大手食品会社の駐在員として南米の地を初めて踏んだ。その後、ブラジルに移住して食品関係の貿易会社を設立し、長年にわたって中南米の畜産業界の動向を見て南米からの食肉、食品の日本・アジア市場向けの開発輸出を手掛けてきた。

3月26日にリニューアルオープンしたリベルダーデ店の店内の様子

 「最近は消費者の間で「高級肉」が差別化されつつあります」とも続ける。(続く、取材:大浦智子)

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