ブラジルすき家=一号店オープンから13年=ブラジルならではの事業展開=(3・終)

3月26日にリニューアルオープンしたリベルダーデ店の様子

 ブラジルすき家を運営するゼンショー・ド・ブラジルの青山昇弘社長は「ブラジルのお客様にすき家をご利用いただき、日本をもっと身近に感じていただくことで、両国の友好に貢献していきたいです」と話す。
 ブラジルすき家のメニューには、ラーメンや定食など日本のすき家にはないものもあり、バラエティ豊かだ。過去の期間限定メニューでは味噌ラーメンが大好評だったという。
 「お客様に呼び止められて、これまで食べたことのなかった日本食を楽しめたと感謝されることもありました。日本ではあまりないことで、とてもやりがいを感じます」と笑顔で話す。
 ヒット商品を生み出すため、食材の調達からコスト面など日本では起こらないような難問も乗り越えてきた。4月のキャンペーンメニュー「麻婆ナス牛丼」では、企画段階で使用を想定していた中華調味料がブラジルになく、理想の味を再現するのに苦心した。ブラジルではこの13年間でインフレが進み続け、手頃な価格で商品を提供するための方法も試行錯誤の連続だった。
 ブラジルでは人口の14%がベジタリアン化した。牛肉価格も高騰し、一人当たりの牛肉消費量が過去最低となった。こうした背景から、日本のすき家にはないベジタリアン向けの「シメジ丼」もメニューに採用された。
 シメジはブラジル内でも日本食材として認知度が高く、シメジ入り牛丼は、カツカレーと並ぶ人気商品だという。

牛肉の安定供給を背景に事業拡大

 ブラジルすき家は、世界第2位の牛肉生産量を誇るブラジルで、厳選した牛肉を安定的に仕入れ、創意工夫を重ねて日本の味を提供してきた。
 現在、サンパウロ市内に20店舗、市外に6店舗を構えている。オープン当初の客層は、日本食に馴染みのある日本人や日系人が多かったが、現在は7割が非日系人となっている。
 青山社長は「サンパウロ市は親日家が多く、先人の日本人移民が築いた信用のおかげで、日系人がいない地域に比べてスタートがしやすかったです。しかし、日本の23倍の国土、約2倍の人口を持つブラジルで、26店舗しかないという今の状況は、とてもすき家がブラジルで認知されているとは言えません。商品には自信があります。今後もさらに事業拡大に力を入れます」と気合を入れる。
 ブラジルは世界第1位の牛肉輸出大国として、先進国のニーズに合わせたトレーサビリティ・安全性、よりおいしい肉の生産に力を入れている。精肉店の従業員はブラジル産アンガスビーフの商品について尋ねられると、その柔らかさとおいしさについて誇らしく語る。ブラジルの一般消費者が高級牛に対する関心を高めることは、世界に輸出されるブラジル産牛肉の品質の向上に追い風となるのは確かだ。(終/取材:大浦智子)

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