栄養失調で3千人弱の乳児入院=世界有数の食糧生産国でさえ

栄養失調や食糧不足で骨と皮のヤノマミ族の子供達(Condisi-YY/Divulgação)
栄養失調や食糧不足で骨と皮のヤノマミ族の子供達(Condisi-YY/Divulgação)

 ロライマ州のヤノマミ族の間で生じた飢餓や疾病による5歳未満児の大量死(4年間で少なくとも570人)の報道が世界中に衝撃を与えたが、2022年のブラジルでは栄養失調で入院加療を要した乳児(1歳未満児)が2754人いたとも報じられている。この数字は2021年の2946人より少ないが、栄養失調蔓延という状態はヤノマミ族だけの問題ではない事も示している。21年はより多くの乳児が入院加療を必要とした事を考えれば、コロナ禍で生じた食の貧困の影響は否定できまい。
 ボルソナロ前大統領や前政権関係者は緊急支援や生活扶助の増額などで食の貧困は解決したはずと語り、コロナ禍で3度の食事がまともにとれない家庭が増えたという報告を否定した。だが、乳児の栄養失調者が多数出ていた事は、母乳を与える母親も栄養失調状態であった事や、家族全体が長期間、食料が不足した状態であった事を推測させる。
 昨年入院した栄養失調の乳児が最も多かった地域は北東部の1175人で、最も多かった州はバイア州の480人。以下、マラニョン州280人、サンパウロ州223人、ミナス州205人、パラー州182人と続く。州人口比で見ると、マラニョン州はバイア州より状況が悪く、サンパウロ州やミナス州はバイア州より85~70%以上少ない計算になる。これから行くと、栄養失調による乳児の入院数は各州の経済力や雇用状態といった格差を反映しているといえる。
 専門家は緊急支援などの所得移転政策がなければコロナ禍の犠牲者はもっと多かったと見ているが、栄養失調児の数もその事を示しているといえそうだ。
 そういう意味では、貧困がより深刻な北部の中でもより貧しいロライマ州に住み、地産地消を実行してきたヤノマミ族が、水銀汚染や金鉱夫による土地略奪などで食に窮し、栄養失調やマラリヤで苦しみ、大量死まで起きている事はブラジル社会の歪みが増幅されて表出した事態といえる。
 しかも、その実態が正確な数字で報告されていなかった事、医療関係者との通信手段も十分ではなかった事、先住民向けの医薬品なども金鉱夫らに横流しされていた事などが、ヤノマミ族の悲劇をより深刻なものとした。
 世界でも有数の農産物生産・輸出国であるブラジルで起きている食の貧困や栄養失調、社会格差は、為政者によるところも大きい。各界の長にイデオロギーなどには関係なく、全ての国民や州民、市民の益を望むのは間違いなのだろうか。(み)

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