日本が多様性高い社会になるために=松田、岡田両教授が来伯=『「日系」をめぐることばと文化』出版

編集部を訪れた岡田教授と松田教授
編集部を訪れた岡田教授と松田教授

 「日本が多様性のより高い社会になるために、ブラジル日系人から何かを学べるのでは」――。金沢大学の言語学者・松田真希子教授(49歳、広島県出身)と神戸大学大学院で文化人類学を教える岡田浩樹教授(60歳、岐阜県出身)が、研究調査のため、8月に2週間ほど滞伯した。編集部を訪れた両教授は、現在進めている研究の概要を説明しながらそう強調した。
 南米だけでなく、地球儀を俯瞰したような幅広い視点からブラジル日系社会やその日本語教育を論じる松田さんは、「日系人は無自覚に、とてもすごいことをしている。そのことを分かってほしい」と語る。
 「ブラジル日系社会の中にある大らかさ、寛容性を前向きに取り上げたい。移住地の日本語教育は決して時代遅れではありません。コミュニティ活動と日本語学校を組み合わせることにより、高齢者も子どもも最前線で日本文化普及の役割を果たせることは、福祉的・教育的な観点からも実は進んだことではないかと思います」という。
 岡田教授も「日系社会の存在が日本文化の広がり、豊かさを示していると思う。グローバルヒストリーの中で、日系人の意味を再認識したい」と語った。
 松田教授はこれらの知見をまとめた書籍『「日系」をめぐることばと文化―移動する人の創造性と多様性―』(くろしお出版、松田真希子/中井精一/坂本光代編)10月に刊行する。
 同書籍の第3章《「違い」の感覚を生きる》(福島青史・長谷川美雪)を執筆した長谷川さんは、現役のソロカバ日本語学校教師。現地の人間も加わったより複眼的な内容が展開される。また第5章ではバイリンガル教育の専門家、上智大学教授の坂本光代さんが《日系4世の継承語・文化保持の可能性》を論じる。
 同書籍の内容をもとにしたオンライン講演会が31日13時(日本時間)に開催される。講演第1部では編者の松田さんが書籍内容を紹介。第2部では、各編著者が内容紹介を行う。講演は福島青史(早稲田大学)《「違い」の感覚を生きる―デュオエスノグラフィーという方法に託した考え―》、トムソン木下千尋(ニューサウスウエールズ大学)《ケイショウゴ教育の変遷について―オーストラリアとブラジルを例に―》、尾辻恵美(シドニー工科大学)《昆布に分散化されたアイデンティティ》さんらが行う。
 参加者は書籍の割引予約が行える。講演会の参加申し込みはフォーム(https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfK2SFIW0cy360eZzjOJfL7XW75HUhAVu3CLZ16MBQTerBOLg/viewform?usp=fb_send_twt)から。定員になり次第受付終了。講演会に関する問い合わせは講演会担当者(メール:mts@staff.kanazawa-u.ac.jp)まで。
 『「日系」をめぐることばと文化―移動する人の創造性と多様性―』の詳細は、くろしお出版社サイト(https://www.9640.jp/book_view/?914)から確認できる。

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