《ブラジル》極貧家庭が4・1%に減少?=「世界の流れに逆行」と所長=政権プロパガンダの可能性も

Ipeaのフィゲイレド院長(Valter Campanato/Agência Brasil)

 応用経済研究所(Ipea)のエリキ・フィゲイレド所長が14日、ブラジルの極貧家庭は年内に4・1%に減ると語ったと同日付現地サイトが報じた。
 同氏がいう4・1%という数字は、コロナ禍前の2019年に記録した5・1%を下回る。新型コロナ流行で起きた、失業者や極貧者、食に窮する人や栄養失調者の増加は2020年以降の大きな課題となっていた。
 フィゲイレド氏は10日にも「現在は世界的に極貧者が増えているが、ブラジルはそれに逆行し、極貧者が減る」と語っている。14日も19年以降、世界中の極貧者は増えており、世界銀行は年末時点の極貧者(日收1・90ドル以下の人)が1億1500万人と見ていると語った。
 だが、ブラジルでは極貧者が減るという。同氏はその理由として、連邦政府の所得転移政策であるアウシリオ・ブラジルの対象者や支給額の増加や、労働市場の改善、正規雇用者増加を挙げた。
 同氏によると、アウシリオの対象家庭では1千世帯あたり364人が正規雇用されており、労働市場も順調に回復と強調。現政権は正規雇用された後も2年間、アウシリオの継続受給を可能にし、生活安定を保障しているとも語った。
 正規雇用者増との発言の根拠は、6月末発表の全就労・失業者台帳による、5月の正規雇用者が27万7018人増えた事などだ。
 労働市場回復は地理統計院(IBGE)が12日に発表した第2四半期の失業率は9・3%で、前年同期比で4・9%減。就労者も9830万人との数字でもわかる。
 他方、IBGEの調査によると、企業主の87%は従業員ゼロの個人企業や自営業で、企業主の45%の收入は最低賃金一つといった数字も出ている。
 また、負債を抱える人が増え、その68%は25~51歳である事、債務不履行者の18%は食料購入で生じた負債の支払いさえ出来ない事、アウシリオから天引き返済する融資の利用者急増などを考えると、アウシリオの対象者や支給額の増加による極貧家庭減少は表面的、一過性のものとなりかねない。
 Ipeaは連邦政府の政策実現のために経済や社会に関する調査や研究を行う政府系機関だけに、極貧家庭減少発言も選挙用の宣伝行為の可能性もあると報じられている。

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