「世界一なし」の返上なるか

クラブW杯でのパルメイラス(Matthew Childs)
クラブW杯でのパルメイラス(Matthew Childs)

 「勝てないジンクス」
 世界のプロ・スポーツ界ではしばし、こうしたものが一種の伝説として語られる。
 米国野球メジャー・リーグ界隈では、名門チーム、ボストン・レッドソックスに「バンビーノの呪い」というものがあった。
 これはレッドソックスが1918年に、ホームラン・バッターとして売り出しはじめていたベーブ・ルース(愛称バンビーノ)を当時弱小チームに過ぎなかったニューヨーク・ヤンキースにトレードに出したことに起因する。
 ルースは移籍後、ホームランを毎年量産し、ヤンキースを常勝チームへと変えた。一方でレッドソックスは、優勝争いに加わることは多いものの、世界一を決めるワールドシリーズで勝てなくなってしまった。
 レッドソックスが「バンビーノの呪い」を解いて世界一に輝いたのは、80年以上たった2004年のことだった。
 ブラジルでこれに相当するのがパルメイラスの「セン・ムンジアル(世界一なし)」だろう。これはブラジルのサッカー・ファン、いやサッカー・ファンでなくてもサンパウロ州民なら非常に多くの人が知っている話だ。
 俗に「サンパウロ州4強」と呼ばれる伝統チームのうち、パルメイラスだけが世界一に輝いていない。これまでサントスとコリンチャンスが2度、サンパウロが1度世界一に輝いているが、パルメイラスは1999年に一度世界2位になったことがあるだけだ。
 こうしたことからパルメイラスの試合では、相手チームが「セン・ムンジアル!」との掛け声で挑発するのが一つの慣例となっている。
 これはスタジアム内だけのことではない。コリンチャンスの応援団は所構わず歌い叫ぶ習慣があるため、パルメイラス戦に向かう道中に「パルメイラス、セン・ムンジアル!」と叫ぶことがある。コラム子も何度か駅中でその様子を目撃したことがある。パルメイラスの「セン・ムンジアル」を誰もが知っているのはこの為かもしれない。
 そんなパルメイラスが現在開催中のクラブW杯の決勝進出を決め、「セン・ムンジアル」を返上する最大のチャンスが訪れている。
 欧州強豪クラブが豊富な資金力を背景に世界中から好選手を集めるようになって以来、南米のクラブが世界一になることは以前ほど容易なことではなくなっている。ここ10年では2012年にコリンチャンスが1度優勝したことがあるだけだ。
 しかし、パルメイラスにとってはありがたくない称号を返上するまたとないチャンス。必死に世界一を狙いにいくだろう。決勝の対チェルシー戦は12日、ブラジリア時間の13時30分にキックオフする。果たして不名誉なジンクスを打ち破り、新たな伝説を打ち立てることが出来るのか、世界の注目が集っている(陽)

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