【新年創刊特別号】令和4年=新年に皇室の弥栄を祈る!=コロナ禍、東日本大震災10年=「平らけき世」の到来を願う

天皇皇后両陛下、⾚坂御所にて【写真提供:宮内庁】

〈人々の願ひと努力が実を結び平らけき世の到るを祈る〉

 新型コロナウイルス感染症の世界的流行の長期化により、国民生活が翻弄され、災禍に見舞われた令和3年ー。そこには、新たな生活様式の制約のなかでも、ご公務の新たな可能性を模索し、常に国民に寄り添われる皇族方のお姿があった。また、愛子内親王殿下のご成年行事が行われ祝意に包まれた一方で、類例を見ない形で決着した眞子さんのご結婚問題を巡ってはさまざまな議論や情報が交錯し、皇室全体にも少なからず影響が及ぶなど、悲喜こもごもの一年でもあった。

▼眞子さん、類例を見ないご結婚に

 昨年、もっとも国民的な関心を集めたのが、何といっても、眞子さんのご結婚だろう。
 婚約内定者であった小室圭さんの母・佳代さんと元婚約者との間の金銭トラブルにより延期されていたご結婚は、皇室の関連儀式が行われず、臣籍降嫁に伴う一時金も支給されない、類例を見ない形で決着することになった。
 金銭トラブルが一向に解決を見ず、小室さん側も2回に及んで文書を公表し理解を求めたが、秋篠宮皇嗣殿下が婚約の条件として提示された「多くの人が納得し喜んでくれる状況」には至らず、事態は硬直化。お二人の意思は揺るぐことなく、ご結婚に至った。
 また、婚約内定会見から、結婚までの約4年の間、メディア報道が過熱するなかで、誹謗中傷と感じられる出来事が長期間続いたことが原因とされ、眞子さんは複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断されていたことも明らかとなった。
 在伯日系社会にとっては、2018年のブラジル日本移民110周年で全伯各地を訪問され、日伯友好親善の実を挙げてこられた眞子さんだけに、祝意の中で結婚を迎え、お幸せになって欲しかったという読者も多かったのではないだろうか。
 ご結婚前には、ブラジル政府およびパラグアイ政府から勲章を授与された。まさに成年皇族として立派にご公務を果たしてこられた、眞子さんの確かなご事績が評価されてのことであった。
 秋篠宮皇嗣殿下のお誕生日に際しての記者会見のなかでは、結婚後の渡米にむけたご準備のなかで、眞子さんから、海外の公式訪問の際に下調べした日系人関係の本等を活用してほしいという意向があったなど、在外日系社会に強く心を寄せてこられたことが伺える。
 ご結婚後、現在、米国で小室圭さんとの新生活を送られている眞子さん。複雑性PTSDの症状が落ちつき、お健やかに、お幸せに過ごしていただくことをただ願うばかりだ。

▼愛子内親王、成年皇族に

 一方、愛子内親王殿下のご成年行事が行われたことは大変喜ばしい限りだった。成年皇族としてご立派に成長され、コロナ禍の国民生活への影響を配慮して、成年に際して新調するティアラを叔母の黒田清子さんから借り受けたことも注目を呼んだ。
 ご成年にあたってのご感想を述べられた愛子内親王殿下は、成年という節目を無事に迎えられたことへの感謝を滲ませつつ、次のように述べられている。
〈これからは成年皇族の一員として、一つ一つのお務めに真摯に向き合い、できる限り両陛下をお助けしていきたいと考えております。そして、日頃から思いやりと感謝の気持ちを忘れず、小さな喜びを大切にしながら自分を磨き、人の役に立つことのできる大人に成長できますよう、一歩一歩進んでまいりたいと思います〉

▼18年ぶりの皇后陛下の肉声

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、従来のご公務の在り方が困難となるなか、皇族方もオンラインによる活動に新たな可能性を見出し、取り組まれてきた一年でもあった。
 昨年、新年の一般参賀が中止となった代わりに、両陛下は国民にビデオメッセージを送られた。これまで一般参賀では天皇陛下のみがお言葉を述べられるのが恒例であったが、6分超に及ぶビデオメッセージでは、皇后陛下も直接国民に語りかけられた。
 適応障害の長期療養に入られる前の2002年の記者会見以来、皇后陛下が国民にむけてお話をされたのは、実に18年ぶり。困難な状況にある国民を案じ、少しでも寄り添いたいという強いお気持ちがひしひしと伝わってくる内容であった。

▼東日本大震災から10年

 また、昨年は東日本大震災から10年を迎える節目の年となった。両陛下は東日本大震災十周年追悼式にご臨席されたほか、岩手県、宮城県、福島県をオンラインにて行幸啓された。各地の復興状況をご視察され、被災地の人々の声に深く耳を傾けられた。
 各地で復興が進み、生活の基盤が整いつつある一方で、今もなお生活を再建できなかったり、癒えることのない心の傷を抱えたりしている人々がいる。両陛下は震災を「過去」の出来事ではなく、「現在」も続いているものとして、震災以来、被災地の人々にずっと心を寄せてこられ、災害の記憶や実体験を継承し、後世に伝えていこうと努力している人々にも深く思いを致してこられた。
 そこには、次の災害を防ぎ、「未来」の人々の幸せをも願う、果てしない祈りが根底にある。
 昨年6月に「第5回国連水と災害に関する特別会合」にて基調講演された天皇陛下は、東日本大震災の経験等から、災害の備えから復興に至るまで、人々の連帯が重要であるとして、次のようにメッセージを送られた。
 〈一人で立ち向かうことは困難な自然の猛威に対しても、私たちは互いに助け合い、気遣い合うことにより、社会全体で立ち向かってきたのです。(中略)災害や疫病の記憶を後世に伝えつつ、その教訓を活かすべく次の災害や疫病に備えながら、誰一人取り残されることなく健康で幸せな毎日を享受できるような社会の構築に向けて、私も皆さんと一緒に努力を続けていきたいと思います〉

▼コロナ禍で「平らけき世」を祈り

 新たな変異株の出現により、世界中で感染が再拡大し、なかなか先の見通しが見えにくい昨今。
 天皇陛下は、多くの人命が失われ、今もなお世界中の人々が大きな試練に直面していることに心を痛めてこられた一方で、強い使命感を以て対応にあたっている医療従事者やコロナ禍で困難にある人々を支援する関係者など、試練を乗り越えようと連携し努力をしている人々に対し、深く思いを致してこられた。
 そのなかで、天皇陛下は次のように御製をお詠みになっている。
〈人々の願ひと努力が実を結び平らけき世の到るを祈る〉
 コロナ収束に向けた世界を築いてゆくためには、科学技術の英知を傾け、国境を越えて人々がより一層連帯を深めていかなければならない。天皇陛下の御心に添うように、ともに手を携えて、「平らけき世」が訪れるよう力をあわせて取り組んでいきたいところだ。

(大澤航平)

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