パラグアイ・ビジネス・ニュース=日本の技術で土壌を活性化=高純度フルボ酸で土質改良

 【パラグアイ・ビジネス・ニュース4月特集号No.54】日本の土壌改良技術で、パラグアイの農業に貢献しようと、大きな挑戦に臨む企業がある。東京都港区に社を構える「国土防災技術株式会社(以下、国土防災)」は、現在JICAの普及・実証ビジネス化事業(中小企業支援型)を通じて、現地でのビジネス展開のための調査準備を進めている。
 今回は国土防災の進めるプロジェクト概要と、担当者へのインタビューをまとめコラムでお伝えする。

“フジミン”量産化に成功した高純度フルボ酸

フジミンのパッケージ。一般的に500倍に希釈して使用

 国土防災がパラグアイの土壌改良のために提案する商品「フジミン」は、再生可能な森林資源を活用し、量産化に成功した高純度フルボ酸である。フルボ酸には、土壌中の肥料分を効率的に取り入れることができるキレート効果があり、土壌環境を改善する機能を有する。植物の生育や土壌に対して、以下のような効果を発揮する。
①光合成を活性化して生育を促進
②発根を促進して根系を健全化
③肥料成分の吸収効率の向上
④土壌中の過剰な養分のバランスを調整
⑤凝集効果による土壌の団粒化促進
 フジミンは主に土木・造園・農業分野で使用されている。土木分野では、斜面防災などに利用されている。フジミンを散布すると、斜面下部に流れやすい肥料成分を植物が効率よく吸収出来るようになり、斜面全体の早期緑化が可能となる。大雨などでも崩れにくい斜面を作り出すことができる。
 造園や農業の分野でも利用されている。肥料の吸収を促進することから、植物の光合成や発根を活性化でき、収穫量の増加、品質の向上など多くの効果がある。フルボ酸は「ミネラルの運び屋さん」と言われている。また、化学物質が混入していないため「有機JAS資材」にも登録されている。
 フジミンはこれまでの実績が認められ、「第28回地球環境:農林水産大臣賞」、「令和2年気候変動アクション環境大臣表彰」、「サステナアワード2020 レジェンド賞」を受賞している。
 国際連合工業開発機関(UNIDO)の「サステナブル技術普及プラットフォーム」STePPにも登録されている。STePPへの登録は、開発途上国・新興国の持続的な産業開発に役立つ技術であると認められたことの証と言える。(http://www.unido.or.jp/en/technology_db/6718/)

パラグアイとの出会い

 2017年頃、当時の在パ日本大使から、パラグアイチャコ地方の塩害改善に日本の技術を用いれないかという相談が日系企業になされた。
 日系企業を通じ、国土防災技術の田中賢治氏に連絡があり、自社でパラグアイの現地調査を行った。実際に調査を行うと、塩害規模が大きいことが分かった。塩害被害の土壌改善は大規模な予算が必要であることから、日本でも塩害対策は通常公共事業として実施されており、チャコ地方の塩害対策も一民間企業だけでの対応は困難と思われた。
 イタイプなど南部でも調査を行った。南部では大豆などの大規模農業や、JICAが長期に渡り支援している小農のゴマや野菜栽培などが盛んだった。しかし、農業生産性が上がらない農地も多くあることが確認でき、フジミンによるビジネスチャンスがあることが分かった。

パラグアイでのニーズ

 パラグアイの農業分野にはいくつかの課題があることが現地調査によって確認できた。大規模大豆農地での調査では、農地の酸性化が顕著であり、大豆に適さない農地へと変わってきていた。また、トマト、ピーマン農地では肥料過多によって、収穫量が減少している農家が多数あることが確認された。ゴマ農家では肥料は使用していないものの、長年の連作によって収穫量が減少している問題があることが、ヒアリング調査によって確認された。
 農業事業者の約90%が50ha未満の小規模農家であるため、農地規模による格差が大きいことも問題として挙げられた。
 これらの課題は、フジミンを活用することによって解決できる見込みがある。

パラグアイでの可能性

 今回の実証実験では、パラグアイ特産のゴマで収量の増加といった大きな成果が見られた。フジミンを散布した畑では1ha当たりであたり909kgの収量があり、散布なしの土地の収量277kgに比べ、約3・3倍の収量増が見られた。
 実験農地では肥料を使用していなかったので、フジミンを使用することで土中に蓄積されている肥料成分を効率的に作物に送ることが可能となり、結実数が増加し、生産性向上に繋がったと考えられる。
 大豆においては枝や葉の量が多く、根が太くなっていることが確認された。トマトでは成長を促進させることで年間の収穫回数を増やすことが可能となり、ピーマンでは個体重量の増加およびサイズのばらつきが少ない安定した品質を確保することができた。

課題

 一方で、市場参入への課題も挙げられる。いくら良い商品でも消費者の手元に届かなければ価値は発揮されない。農業が主産業であるパラグアイでは、既にブラジルや北アメリカの国際企業から多種多様な農業肥料関係商品が流通しており、後追いで大手の背中を追いかけることは容易ではない。
 さらに日本からの輸送費や関税などを鑑み、品質を保持しながらのコストダウンは今後のパラグアイでの普及において大きなポイントとなっている。
 小農が多い同国においては、販売方法にも更なる検討が必要になる。現地パートナー企業候補とのビジネス戦略計画準備は今も綿密に進められている。
 これらの状況を踏まえ、国土防災のJICA普及実証事業は2023年11月まで継続予定である。農作物への効果は実証実験により確認されており、今後はビジネス展開に向けた更なる調査が鍵となりそうだ。同社ではプロジェクト終了後も、パラグアイのチャンスを継続して追い求め、ビジネスベースでの成功を目指していく。

実証栽培用にフジミンを配布する田中氏と上野氏(2020年3月)

JICAパラグアイ事務所のコメント

1)フジミンに期待するポイント
◎環境や生態系に負担をかけずに農作物の生産量を増加させ、生産者の収入安定・増加に繋がることを期待している。
◎利用できる作物の範囲が広く、パラグアイで生産されている大豆やゴマ、野菜、園芸品種に至るまで幅広い農家のニーズに適合してほしい。
2)JICAとして力を入れてサポートしたい部分
◎JICAが参加する展示会やEXPO、JICAプロジェクトを紹介する場でフジミンの効果を伝え、認知度アップに協力する。
◎シナジー効果を得るため、JICAが実施中の他プロジェクトとの連携。
3)パラグアイの農業関係者や行政機関の期待の様子
◎環境にやさしいことへの高評価と、パラグアイが直面している土壌問題の改善への期待が感じられる。
◎同じ耕作面積で収穫量が増えることや、一度の散布で十分であることへの関心も高い。(出典=PBNサイトhttp://pybiznews.wix.com/paraguay-biz-news

最新記事