三権中枢襲撃事件=トレス前法相、帰国直後に逮捕=ボルソナロも捜査対象に=陸軍が襲撃者逮捕妨害か

トレス容疑者が収監された軍警(Valter Campanato/Agencia Brasil)
トレス容疑者が収監された軍警(Valter Campanato/Agencia Brasil)

 14日、三権の中枢施設襲撃事件で逮捕命令が出ていたボルソナロ政権時代の法相で連邦直轄区保安局長だったアンデルソン・トレス容疑者が、米国から帰国直後にブラジリアの空港で逮捕された。また、この事件の捜査対象にボルソナロ前大統領が含まれることとなった上、ジュリオ・セーザル・デ・アルーダ陸軍司令官が襲撃者たちの逮捕を妨害していた疑惑などが浮上している。13〜16日付現地紙、サイトが報じている。
 トレス容疑者はブラジリア時間の14日午前7時18分、滞在先の米国フロリダ州からの飛行機がブラジリアに到着した直後、待ち構えていた警察によって逮捕された。
 法相任期終了直後の2日に連邦直轄区保安局長に就任した同容疑者は、6日夜に突如米国に飛び立つという不審な行動を行い、その2日後に襲撃事件が起きたことで責任を追及され、即刻解任された。また、10日には最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事が逮捕命令を出していた。
 さらに12日にはトレス氏の自宅で、大統領選の結果を覆す意向を持つ条令の提案書が発見され、同氏の立場はさらに厳しいものとなっていた。
 トレス容疑者は逮捕後、ブラジリアから15キロ離れたグアラーにある軍警第4大隊に連行され、モラエス判事の側近のアイルトン・ヴィエイラ司法官による収監前の監護聴聞会を受けた。聴聞会はビデオ形式で行われ、トレス氏の担当弁護士のロドリゴ・ロカ氏も参加したが、ロカ氏は終了後、マスコミの取材にも答えようとせず、無言で退席した。同氏は第4大隊で継続勾留中で、今後、パプーダ刑務所内にあり、軍警たちが勾留される軍警第18大隊の刑務所(通称パプジーニャ)に移され、事情聴取を受けることになっている。
 過激化していたボルソナロ派による侵入容認や選挙高裁による認証を無効化し、大統領選の結果を覆そうとしていたといった嫌疑はかなり重いものとされており、専門家の見方では同容疑者は最大91年の実刑を科される可能性があるという。
 また、襲撃事件直後から関与の有無が注目されていたボルソナロ前大統領について、連邦検察庁が13日、ボルソナロ氏を捜査対象に加えることを最高裁に要請。モラエス判事が承認したことで、前大統領は反民主主義的行為扇動容疑で捜査対象となった。
 ボルソナロ氏は襲撃事件直後に腹痛を起こし、滞在先のフロリダ州の病院に入院。事件前の7日にはトレス容疑者と面会していたとも報じられており、襲撃、さらに疑惑の条令への関与の有無も注目され始めている。
 さらに15日、米国のワシントン・ポスト紙が、ジュリオ・セーザル・デ・アルーダ陸軍司令官が9日、フラヴィオ・ジノ法相が襲撃者らが集結していたブラジリアの陸軍施設前での大統領派キャンプの解体を進めた際、「誰も逮捕してはならぬ」と妨害していた疑惑を報じた。
 イバネイス・ロシャ連邦直轄区知事も昨年12月29日に同キャンプの解体を進めた時に「陸軍が妨害した」と証言したほか、当日、襲撃者を逮捕しようとしていた軍警を、陸軍大佐を名乗る人物が現れて妨害する事態も発生。それに対し、その軍警が「気でも狂ったのか、大佐」と食ってかかる映像が報道で拡散されている。

◆関連コラム
 8日の三権中枢施設襲撃事件で注目された女性がいる。サンタカタリーナ州在住のマリア・デ・ファッチマ・メンドンサ・ジャシント・ソウザ容疑者で、襲撃時には、67歳という高齢らしからぬ暴れぶりと、「これは戦争だ」と叫んで最高裁を挑発する言動がネットで拡散され、話題になった。15日夜に放送されたグローボ局の「ファンタスチコ」によると、彼女は2014年に麻薬取引で逮捕され、3年の実刑に服した前科がある他、年金受給の際に偽証嫌疑で捜査を受けていたことなどがわかっているという。今回の襲撃では同容疑者の他にも、過去に犯罪歴のある襲撃者の存在が複数報じられており、気になるところだ。

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