日本で活躍する日系バーテンダー=アジア優良50店常連の五十嵐さん

五十嵐ロジェリオさん

 日系ブラジル人バーテンダーの五十嵐ロジェリオさん(47歳、3世)は、東京恵比寿で「BAR TRENCH」を経営している。同店は業界関係者が選ぶアジア地域の優良バーランキング「ASIAS 50 BEST BARS」に2016年から7年連続で選出される人気店だ。カクテルに関する講演を行うため来伯した五十嵐さんにバーテンダーとなるまでの半生を聞いた。

 五十嵐さんはサンパウロ市で生まれ育ち、1994年、高校卒業後19歳でデカセギとして日本へ渡った。日本に行くのは初めてで、茨城や神奈川、北海道などで4年間働いた。その後、英語を学ぶためカナダに1年間ホームステイし、24歳で日本へ戻った。日本帰国後は大学進学を目指して、日本語と受験のための勉強を始めた。
 勉強の傍ら、生活費と学費のため、アルバイトを始めた。初めは喫茶店で昼間の勤務だったが、やがて時給の高い夜間に移した。アルバイト生活は1年間続けたが、アルバイト収入で進学費用を工面することは難しく、進学は断念した。「当時はとても悔しかった」と語る。
 2004年、喫茶店からバーへ職場を変え、カメラマンアシスタントの仕事も始めた。バーでは当初、ウエイター業務やグラス拭きに従事。1年ほどでジントニックとマーガレットのカクテルを作るようになった。「あの頃は忙しくて寝る時間もなかった」と振り返る。
 バーテンダーとカメラマンアシスタントの仕事はどちらも順調に進んだが、どちらか一方に専念する必要性を感じ、バーテンダーの道を選んだ。
 専業バーテンダーとなった五十嵐さんは、ビターズ(苦味酒)やアブサン(薬草系リキュール)などこれまで日本ではあまり使われていなかった種類の酒をカクテルに使用し、バーテンダーとして名を馳せるようになった。
 2010年に「BAR TRENCH」を開業し、同店は今年の「ASIAS 50 BEST BARS」で25位にランクインした。「近年は他国のバー文化も発展しているので、25位選出は予想外で大変驚きました」と喜びを表した。
 五十嵐さんは今後について「日本だけでなく、世界で活躍したい」と抱負を語った。

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