西川渥氏にイタクア名誉市民賞=30年以上も地域社会に貢献で

西川さんとイタクアケセツーバのエドゥアルド・ボイゲス市長
西川さんとイタクアケセツーバのエドゥアルド・ボイゲス市長

 サンパウロ州イタクアケセツーバ市内で、30年以上にわたって食品用プラスチックパッケージを製造販売し、地域社会を活性化してきたスターパック社の西川渥さん(69歳、熊本県)が、2月2日に同市から名誉市民賞を授与されることが決定した。年明け早々の吉報に、「大変名誉なことですが、より一層責任が重くなり、身が引き締まる思いです」と、笑顔で心境を述べた。
 現在、スターパック社は食品用プラスチックパッケージの製造業界で、ブラジル全国の主要業者10社の中でも上位の売上高を誇る。創業以来、近年の不景気やコロナ禍にあっても、「今のブラジル社会に最も必要とされている業界の一つで、社会のニーズに対応している」ことから成長を続け、今年も右肩上がりの成長が予測されている。
 そこには、西川さんの若いころからのゆるぎない信条「正直、義理、礼儀」が反映されている。
 今回の授賞の通知は、昨年12月12日に受け取った。イタクアケセツーバの工場内や周辺のインフラ整備について市役所や市議会議員と交渉の最中、世間話をしていた時に、議員やエドゥアルド・ボイゲス市長が西川さんの同市への貢献の大きさに目をとめた。西川さん自身や息子たちが過去の経歴を改めて書き出したところ、即座に授賞が決定した。
 西川さんは熊本県玉名市出身の父親と熊本市出身の母親のもと、1952年にサンパウロ州プロミッソンで生まれた。5歳からスザノ市の北部入植地に家族と移り、同地で成長した。両親ともに教育熱心で入植地の日本語教師を務め、子供たちには日本語だけでなく、大和魂や武士道といった日本の精神を持って生きることを教え、それが彼の人生観のベースになっている。
 モジ市のブラスクーバス大学で経済学を学び、大学院時代には教授のアシスタントを務め、教壇に立ちながら新進気鋭の経済学者としてキャリアをスタートさせた。
 転機が訪れたのは25歳。ブラジル政府からの特命を受けた国費留学生として3年間、日本で経済企画庁で実学研究に没頭した。帰国後、31歳の時に兄に請われて事業に経営参加し、1984年にスターパック社の前身となるSunnyvale社を創業した。
 1989年から1年かけて約1万平米の工場を建設し、翌年から操業を開始、2002年にスターパック社として独立した。当初40人だった従業員数はコロナ禍までに100人、コロナ禍に入ってからは140人を擁することになった。
 「勤続20年から25年になる社員もいて、福利厚生、自己研鑽の機会を提供することにも力を入れてきました」と話す西川さん。今回、授賞する大きな決め手になったのが、ビジネスで成功しているだけでなく、地域社会への貢献と社員を尊重した会社経営の在り方である。
 コロナ禍に入ってからは地元の病院、診療所、警察にマスクとアルコールジェルを配布してきた。長年にわたって、社員には仕事に必要な専門能力を開発する学習トレーニングや自己啓発に関する講座やセミナーの支援も行ってきた。
 さらに、自らもアマチュアテニスプレーヤーとしてサンパウロ州連盟の大会にも出場するスポーツ愛好家で、将来性のあるスポーツ選手を個人的にサポートするなど、他にも様々な慈善活動を支援してきた。
 〝和の心〟を自らのベースとしながら「レモンをもらったらレモネードを作りなさい」というブラジル流の自然体な生き方を心がけてきたという。その生き様が花開き、名誉市民賞授賞の決定につながったようだ。

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