
【既報関連】イタリア下院は20日、3月に施行された血統主義(ius sanguinis)に基づく市民権付与制度の見直しを定めた暫定措置令(decreto―legge)を、修正なしに可決した。法令は今後、セルジョ・マッタレッラ大統領による裁可を経て正式な法律として発効となる見通しだ。成立すれば市民権の申請資格は、イタリア国内で出生した市民の「子」または「孫」に限定されると同日付エスタード紙(1)(2)が報じた。
同法令は3月28日に閣議で承認され、即時発効した。だが同法令は暫定措置として発行されたもので、60日以内に議会承認を受け、大統領の裁可がなければ無効となる。その期限が27日に迫っていた。
1992年に制定されたイタリア市民権法では、世代や言語・文化的つながりの有無を問わず、イタリア人の血統を有するすべての子孫に対し市民権申請を認めてきた。今回の法改正により、申請資格がイタリア国籍を有する人の子と孫に限定されることで、イタリア系の血統を有する約3200万人のブラジル人が影響を受けると見られている。
新規定は、3月28日以降に市民権を申請した人にのみ適用され、それ以前に申請を完了していた人については、従来の制度が適用される。審査中の案件も新規定の影響を受けない。
新制度においては、親か祖父母がイタリア国籍を有しているだけでは不十分であり、申請者が他国籍を有していないことが要件。これにより、二重国籍を有するイタリア系ブラジル人は、その市民権を次世代に移譲することができなくなる。
ただし、例外的な代替措置として、親が市民権取得後にイタリア国内で2年以上連続して合法的に居住し、その後に出生した子については市民権を取得することが認められる。ただし、イタリアに一度も居住したことのない人には、この手段は選択肢にならない。
未成年者に関しては手続きはより簡略化され、親がイタリア国外で生まれたイタリア国籍保持者である場合、出生か養子縁組後1年以内に市民権取得の意思を表明すれば、認定が可能となる。これが行われなかった場合でも、当該未成年者がイタリアで2年間継続して居住すれば申請資格を得る。
今回の法令が正式な法律として成立した場合、遷移措置として、18歳未満の子どもについては26年5月31日までに市民権取得の意思を表明すればよい。この措置は、25年3月27日までに市民権申請を行っている親を持つ子どもに限って適用される。
今回の制度変更の目的は、市民権の濫用や、いわゆる「パスポートビジネス」と呼ばれる不正行為を抑制し、行政手続きの効率化と負担軽減を図る点にある。イタリア政府は、国内の行政機関における過剰な申請処理や虚偽申請の抑止を通じて、領事サービスを真に必要としている人たちに対し、より迅速かつ公平なプロセスを確保する姿勢を示している。
今回の法改正について、一部の憲法学者から違憲の可能性や公布手続きにおける法的欠陥が指摘されているものの、現時点ではイタリア憲法裁判所への正式な異議申し立ては行われていない。