ブラジルの代表的な株価指数であるボベスパ(Ibovespa)は、22日(水)の取引を前日比1.34%高の13万2,216.07ポイントで終え、3月27日以来、およそ1カ月ぶりの高値水準を記録した。ドル相場は小幅な下落となり、対レアルで1ドル=5.718レアルと、わずかに0.16%下落した。
今回の株高の背景には、米国のドナルド・トランプ前大統領による発言の軟化がある。これまで米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長や中国に対し攻撃的な姿勢を見せていたが、一転して協調姿勢を示したことで、市場のリスク回避ムードが和らいだ。これにより、米国や欧州の主要株価指数も上昇し、投資家心理の改善がブラジル市場にも波及した。
米国ではトランプ氏が「中国からの輸入関税は現行の145%から大幅に引き下げるが、ゼロにはしない」と発言。中国側も「交渉の扉は大きく開かれている」と応じ、通商協議再開への期待が高まった。米財務長官のベセント氏も「高関税は是正されるべきだ」と述べ、両国の歩み寄りが意識されている。
加えて、米国の経済指標にも陰りが見え始めた。4月の購買担当者景気指数(PMI)速報値は、過去16カ月で最低水準となり、景気減速への懸念が浮上。米国民の経済運営への支持も37%にとどまり、トランプ氏の発言に一定の軌道修正を促した可能性もある。
国内要因も株価を下支え
国内でも前向きな発言が相次いだ。フェルナンド・ハダジ財務相は「米中貿易戦争の影響は懸念されるが、ブラジルが景気後退に陥るリスクはない」と表明。下院議長のウーゴ・モッタ氏も、政府と議会の協調姿勢を強調し、「財政枠組みの健全性維持と歳出見直しが重要」と語った。
セクター別では資源・金融株が上昇
銘柄別では、鉄鉱石大手ヴァーレ(Vale)が1.19%上昇し、ブラデスコ(+3.30%)やイタウ・ウニバンコ(+2.10%)などの銀行株も買われた。一方、原油価格の下落を受けて、ペトロブラス(Petrobras)は1.13%下落した。OPECプラスが6月も増産継続を示唆したことで、エネルギー株に売りが出た。
スーパーマーケット大手アサイ(Assaí)は3.82%高と好調。食品加工のJBSは米国証券取引委員会(SEC)による米国上場承認を受け、6.38%の大幅高となった。航空・防衛のエンブラエルも3.53%高。堅調な受注残が評価された。
世界銀行がブラジル成長率を下方修正
ただし、中期的な経済見通しには不透明感が漂う。世界銀行は、ブラジルの2025年の成長率予測を従来の2.2%から1.8%へ下方修正。高金利の長期化や世界貿易の縮小が重荷となると指摘した。中でも、米中の関税問題や中国経済の減速は大きなリスク要因として挙げられている。
加えて、財政状況も厳しい。中南米諸国の債務残高はGDP比63.3%に達し、2019年の59.4%から上昇。投資拡大が求められる中で、歳出抑制と構造改革の両立が課題となっている。
世界銀行のマロニー主任エコノミストは、「生産性向上と技術革新、さらには近隣国への製造業移転(ニアショアリング)を通じた対外経済統合が、今後の成長の鍵」と指摘した。