ボルソナロ、公営銀行を選挙で利用?=債務不履行者にも貸付=8割が焦げ付きの枠も

ボルソナロ氏とギマリャンエス氏(Foto: Antonio Cruz/Agência Brasil)
ボルソナロ氏とギマリャンエス氏(Foto: Antonio Cruz/Agência Brasil)

 ボルソナロ前大統領が2022年、大統領再選策として、連邦貯蓄銀行(CAIXA)を通じて、低所得者層に恩恵を施すべく、総額106億レアルの貸付を行わせたが、その中には返済実績の悪い人たちも多く含まれていたと、29日付UOLサイト(1)がスクープで報じている。
 報道によると、ボルソナロ前大統領は2022年初頭、これまでの福祉政策「ボルサ・ファミリア」に代わる社会福祉政策「アウシリオ・ブラジル」だけではルーラ氏の強い地盤である低所得者層の支持を得ることは難しいと判断。その層の支持を強化する対策として、CAIXAの頭取だったペドロ・ギマリャンエス氏とともに融資政策を作っていたという。ギマリャンエス氏はボルソナロ氏と親密な関係にあったことが知られていた。
 その策としてまず挙げられるのが、2022年3月に発足した「SIMデジタル」だ。この政策でCAIXAは30億レアルを貸し付けたという。このプログラムは、既に債務不履行となり、新しい融資が受けられなくなっていた人を融資の対象にしており、利用者の80%が債務を返済できずにいる。
 CAIXAはこのプログラムで空いた穴を埋めるため、勤続期間保証基金(FGTS)からも金を集めていたという。FGTSから18億レアル、CAIXAからも6億レアルが穴埋め用に使われたという。
 なお、ギマリャンエス頭取がセクハラ被害で同行の女子職員たちから糾弾され、同年6月29日に辞職に追い込まれたことで、同プログラムによる融資は打ち切られたという。
 もう一つは、アウシリオ・ブラジルの受給者を対象とした天引き融資(empréstimo consignado)で、こちらには76億レアルが解放された。同プログラムの利用者はアウシリオから返済することになるため、返済は確実とされていたが、違法性が取り沙汰された約10万人が生活扶助の支給対処から外されたため、貸付金を回収できるかは不透明になっているという。
 この二つの融資を実施したことで、CAIXAの2022年第4四半期の短期流動性指数は1620億レアルまで落ち込んだ。この額は前年度を700億レアル下回っており、同指数が導入された2017年以来の最低水準となっていた。この指数は銀行の経営状態のリスク指標だ。
 現頭取のリタ・セラーノ氏は同行の職員代表として経営審議会に参加していた昨年12月に、連邦政府が要請した二つプログラムによって銀行の流動資金が大幅に減少したことに言及し、「流動性減少の最大の原因は連邦政府主導のプログラムを銀行が実行したこと。銀行の金が選挙前にこのように非常に疑わしい目的のために使われたことは大問題」と批判していた。
 ボルソナロ氏やギマリャンエス氏はまだ、この件に関する見解を表明していない。
 この報道に対しては特に、連邦政府側から強い批判の声が上がっている。労働者党(PT)のグレイシ・ホフマン党首は、「アウシリオ・ブラジルの受給者や新たな融資が受けられなくなっていた人たちに100億レアル以上を開放し、銀行の蓄えを無駄使いした」として、ボルソナロ氏とギマリャンエス氏への処分を求めた。

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